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原価計算 | 長坂悦敬 |
第6章 製造間接費の計算
6-4 配賦差異の原因分析 |
製造間接費の実際発生額と予定配賦額の差額、すなわち製造間接費配賦差異を分析することを差異分析(variance analysis)という。製造間接費の予定配賦という状況下では、一般に製造間接費配賦差異を予算差異と操業度差異に分解する2分法(tow-variance analysis)が用いられる。
配賦差異 = 予算差異 + 操業度差異
製造間接費の大部分が固定費である場合や、実際の操業度と基準操業度にあまり差が生じない場合、固定予算の適用を考える。配賦差異を予算差異と操業度差異に分ける2分法では各差異が次式で定義される。図表2-9はこれを図解したものである。
予算差異 = 固定予算額 - 実際発生額
操業度差異 = 予定配賦額 - 固定予算額
= 予定配賦率 ×(実際操業度 - 基準操業度)
図表2-9 固定予算における差異分析
固定予算では実際操業度における予算額(予算許容額)が基準操業度における予算額と同じである。基準操業度における予算額が製造間接費予算額(固定予算額)であり、予算差異は製造間接費予算額から実際発生額を控除した差額となる。また、操業度差異は予定配賦額と製造間接費予算額の差額となる。
変動予算の下での2分法では、予算差異と操業度差異が次式で定義される。図表2-10はこれを図解したものである。
予算差異 = 実際操業度における予算額 - 実際発生額
=(変動費率 × 実際操業度 + 固定費予算額) - 実際発生額 (2-1)
操業度差異 = 予定配賦額 - 予算額
= 固定費率 ×(実際操業度 - 基準操業度) (2-2)
図表2-10 変動予算における差異分析(別紙挿入)
なお、(2-1)式での変動費率とは、基準操業度における配賦基準数値(たとえば、直接作業時間)の単位当たり変動費額をいう。また、(2-2)式での固定費率は、基準操業度の固定費予算額を基準操業度における配賦基準数値で除した額である。この変動費率と固定費率の和が予定配賦率である。変動予算では実際操業度における予算額と実際発生額の差額が予算差異になることに注意したい。
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