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modern american economy
コラム:固定相場制とドル危機
担当:甲南大学 稲田義久


 ドルの価値は、1934年金準備法によって、アメリカ政府が外国通貨当局に対して金1オンス=35ドルのレートで金交換を保証することで支えられていました。政府間の金交換はさほど頻繁には行われませんから、金の実勢価格はロンドン金自由市場におけるレートが参考になります。60年代のアメリカのドル散布が恒常化する中で、ドルの過剰傾向が目立つようになりました。このため60年代の初めからすでに金価格に上昇圧力が生じていたといわれています。

 これに抗するために60年代後半には、アメリカなどの主要国が保有する金を供出して、金価格の上昇を食い止める「金プール制」などを考案しましたが、あまり効果はありませんでした。68年には、一方では金1オンス=35ドルで公的金・ドルの交換性を維持しつつ、他方ではロンドン金自由市場における金価格高騰を放置することになりました(金の二重価格制)。この措置により、ドルに対する金の裏づけが有名無実化し、ドルの信頼が大きく揺らぐことになりました。

 アメリカとしては金価格の大幅引き上げが現実的な解決法であったのですが、逆に、平価切下げの思惑が投機を促進することになりました。信頼を失った通貨は格好の投機の対象になったのです。

図3-3 金価格:ドル/オンス:ロンドン
図3-3 金価格:ドル/オンス:ロンドン

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