modern chinese economy
コラム:中国の投資とその資金源泉の変遷
担当:甲南大学 青木浩治 藤川清史
計画期で支配的地位を占めてきた国有・都市集団所有制企業部門は改革・開放後、そのウェイトを大幅に下げてきました。特に工業生産額(及び程度は下がりますが都市部雇用)の面でこのことは非常にはっきりしています(5、8章を参照して下さい)。これに対して、投資面での伝統部門の比重は依然、大きいと考えてよいでしょう。
表8-10は過去20年間における中国の投資の所有制別シェアの推移を見たものです。この表によると、1980年時点で8割以上の投資は国有・都市集団所有制企業からなる伝統的部門によって行われていましたが、その比重は徐々に低下し、2001年時点では50%になりました。しかし、一国の投資の半分が依然、国家コントロールの及ぶ伝統的部門が行っているという事実は注目に値します。
表8-10 中国の固定資産投資シェア
|
1980年 |
1985年 |
1990年 |
1995年 |
2001年 |
伝統部門 |
84.4 |
71.1 |
69.7 |
59.0 |
50.1 |
内、国有 |
81.9 |
66.1 |
66.1 |
54.4 |
47.3 |
非伝統部門 |
15.6 |
28.9 |
30.3 |
41.0 |
49.5 |
農村 |
14.6 |
26.6 |
27.5 |
21.9 |
19.4 |
都市 |
1.0 |
2.2 |
2.8 |
18.8 |
30.1 |
内、株式制 |
n.a. |
n.a. |
n.a. |
4.3 |
15.2 |
内、外資 |
n.a. |
n.a. |
n.a. |
11.1 |
8.1 |
その他 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.4 |
注) | 全固定資産投資に占める各部門投資シェア。伝統部門は国有・都市集団所有制企業、非伝統部門の農村部は集団所有制・個人所有制企業合計、都市部は都市部個人・連営・株式・外資系企業の合計。 |
資料) | 国家統計局固定資産投資統計司編「中国固定資産投資統計1950-1995」1997年、国家統計局編「中国統計年鑑」。 |
しかし、改革・開放後中国の投資資金源は大きく変貌しています。
図8-14は固定資産投資(新規設備や建物の取得)の資金源泉をグラフ化したものです。この図によると、計画期ではわずかな内部留保を別にして、80%の投資資金は国家資金によってファイナンスされていました。財政部という資金の配分を司る部門を経由して、無償交付により投資資金が配分されていたのです。
図8-14 固定資産投資資金の資金源泉構成比(%)
資料) |
国家統計局固定資産投資統計司編「中国固定資産投資統計1950-1995」1997年、国家統計局編「中国統計年鑑」。 |
ところが改革・開放後、四つの変化が起こりました。第一に、国家予算からの配分資金のウェイトが大幅に低下したこと、第二に、その代わりに伝統的部門も含めて内部資金等により投資のファイナンスが行われるようになったこと、第三に1980年から「撥改貸」政策が始動し、銀行借入が投資資金の重要な源泉となったこと、そして第四に、その比重はあまり高くありませんが外資系企業その他による海外からの資金導入が活発化しているということです。このように改革・開放後中国の投資資金源泉の最大の変化は、財政部によるほぼ一元的な資金配分方式から内部資金の活用と銀行経由での資金調達へのシフトでした。
もちろん銀行融資はほとんど国有企業ならびに株式所有制企業に集中しています。しかし1990年代後半からはその銀行ローンのシェアは25%程度で頭打ちとなり、国有部門を中心として1998年より再び国家予算内資金のシェアが拡大しています。中国は1998年より財政拡張路線へ転換しましたが、その投資の具体的実行主体は国有企業なのです。