human and environment
はじめに
- ヒトからみた環境 -  玉利 祐三





 生物学的にみれば、ヒトは大気から酸素を吸入し、二酸化炭素を放出する、いわゆる呼吸を営む哺乳動物である。

 出生前、母親の羊水に保持された母体環境から、分娩という人生のビック・イベントにより、新生児は出産と同時に大気と接触し、呼吸することになる。科学的には、大気と遮断されたそれまでの母体内の還元環境から、出生後の大気と接触する酸化環境で生活することになる。そのため出生後の新生児にとっては様々な酸化的障害が予想されるが体内で抗酸化作用を有する酵素等の作用により、健全に生活できるのも自然の生命の営みである。

 一方、新生児の栄養源は、母乳ないし人工乳(乳児用調製乳)に限られるので、母乳と人工乳の質と量の論議は、重要な課題である。母親のとる食事と母乳とは栄養面では緊密な関係にある。離乳食の食材と飲料水の安全性にかかわる質の問題は、乳児にとってだけでなく、最近のダイオキシン問題もふくめて我々成人にとっても重要な課題である。

 これらの水(水圏)、空気(大気圏)、土壌と作物(岩石圏)は、地球環境そのものであり、我々ヒト(生物圏)との関係は密接である。ここでは、母乳をとおしてみた環境を考えてみよう。