human and environment
1-2. 母乳の成分は何だろう?
- ヒトからみた環境 -  玉利 祐三

母乳と牛乳の成分比較

牛乳の構成成分
 牛乳の主要成分は、水分、タンパク質、脂質、糖分、無機質(ミネラル)であり、その他に有機酸やビタミン類が含まれている。牛乳はおおまかには、水分(約87%)と全固形分(約13%)から成る。全固形分は、タンパク質(主にカゼイン)2.9〜3.9%、脂質[脂肪 (ファット)]3.3〜5.3%、糖質[乳糖(ラクトース)]4.4〜4.7%、無機質(ミネラル)0.7〜0.8%に分類される。

 なお、日本全国のホルスタイン乳及びジャ−ジ−乳の成分の平均組成、また、米国のホルスタイン乳の平均組成は、上記の含有量の範囲内にあり、乳牛の種類及び諸外国にわたる地域差も、牛乳の主要な成分組成には影響がないようである。



母乳(成熟乳)の構成成分
 母乳は牛乳と比較して、水分と全固形分含有量はほとんど変わらないが、タンパク質(1.1〜1.9%)および灰分(0.2〜0.3%:ミネラル)含有量が低く、糖質含有量が高い(乳糖:6.1〜6.8%)。なお、脂肪含有量(2.8〜4.2%)は大差がない。

 母乳のタンパク質は、牛乳に比べるとカゼインが少なく(母乳 1.9%、牛乳 1.1%)、乳清タンパク質の割合が高い(α−ラクトアルブミン:母乳 0.16%;牛乳 0.11%、免疫グロブリン:母乳 0.14%;牛乳 0.07%、ラクトフェリン:母乳 0.15%;牛乳 0.01%以下、リゾチーム:母乳 0.04%;牛乳 1×10−5%以下)。特に初乳で高いので、初乳を飲むことは、新生児の免疫能、感染予防の点で必須である。

 母乳の脂質(脂肪)は、牛乳脂質と比べると、低級脂肪酸をほとんど含まず、リノール酸を多く含む。また、母乳の各種脂肪酸の組成割合は牛乳と異なるため、母乳の脂肪のほうが乳児で消化吸収されやすい。
 また、母乳の組成は分娩後の経過日数、食事の質と量、分泌量、季節、人種などによって影響されるようである。一般的には、主なエネルギー源となる脂質と糖質は、出産後の日数とともに増加し、タンパク質(初乳:1.9%、成乳:1.1%)と無機ミネラル(初乳:0.3%、成乳:0.2%)は逆に減少する傾向にあると報告されている。