human and environment
1-3. 母乳には種類があるの?(母乳の分類)
- ヒトからみた環境 -  玉利 祐三

分娩後の経過日数による分類
 母乳には、分娩後の経過日数に応じて次のように分類されている。分娩直後から4日までのものは、黄色味を帯びており粘性が高くタンパク質及びミネラルを豊富に含んでおり、初乳 (colostrum) とよばれている。

 産後5日から2、3(あるいは4)週間までのものは移行乳 (transitional milk)、そして2、3(あるいは4)週間以降のものは成熟乳あるいは成乳 (mature milk)と呼ばれ、初乳に比べて脂質、糖質含有量が高く(逆にタンパク質とミネラル含有は減少する)なり、この頃のエネルギー消費が盛んな赤ちゃんに対応できるような組成に変化し、母乳成分濃度もほぼ一定となる。

 なお、乳児用調製粉乳(人工乳、粉ミルク)は、この成熟乳の成分をもとにつくられている。

授乳中の分類
 一回の授乳について、最初に出てくる母乳で脂質が少なくて水分量の多い、清澄で薄いものを前乳 (fore milk) 、つまり食事に例えるならば「前菜」のようなもの、次いで中間乳 (mid stream milk)、そして脂質が多くなり濃い乳白色の後乳(hind milk)、食事でのメインディッシュに相当するものへと連続的に変化する。

 赤ちゃんが後乳を飲み終える頃には量的にも質的にも満足し、そして母親の乳首からの吸引したことによる程良い疲れ、さらに母親の体温、心音等の心地よい授乳環境から、赤ちゃんは安らかな眠りへと導かれる。

 この点は、最初から最後まで一定組成、一定温度そして一定の吸引力(弱い力でたやすく哺乳瓶から吸引)での人工乳授乳とは大きく異なる。