human and environment
2-3. 粉ミルクの種類成分
- ヒトからみた環境 -  玉利 祐三

育児用粉ミルク(乳児用調製粉乳)
 母乳が不足したり、病気で授乳できないなど何らかの理由により母乳を赤ちゃんに与えられないとき、母乳に代わる育児用ミルク(乳児用調製粉乳)が必要となり、我が国でもその開発に取り組み、今日の粉ミルクへと改良が重ねられてきた。

 粉ミルクは特殊な治療用ミルク(アレルギー疾患、心・腎・肝臓疾患等用等)を除いて、その主原料は牛乳である。

 粉ミルクは、牛乳原料のカゼインから消化吸収されやすい乳清タンパク質が配合(ソフトカードミルク)され、タンパク質濃度の低減化と高い濃度の無機ミネラルの脱塩処理による低ミネラル化が行われている。

 母乳ではリノール酸などの消化・吸収されやすい不飽和脂肪酸を含むので、粉ミルクでは、牛乳由来の脂肪(飽和脂肪酸)を除き、大豆油・ヤシ油を原料とした植物性脂肪(不飽和脂肪酸)を増量し、必須脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸などを配合している。

 その他、フラクトオリゴ糖などの糖質、ビタミン類、微量の無機栄養ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄、マンガン、ヨウ素などの微量元素)が添加されている。

 ただし、これらの微量ミネラルは、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、ピロリン酸第二鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛などの化学形(化学薬品)で添加されている。

 従って、人工乳(粉ミルク)の主な組成は母乳に近づいてきたとはいえ、人工乳では、添加される脂肪酸の原料物資の選択の問題、そして無機栄養ミネラルとして添加される微量の必須微量元素の種類・添加量・化学状態の問題が残されている。

 これらの微量の無機ミネラルは、生体内で正常な生理機能、物質代謝、酵素反応等に関与するため、人体、生命維持には欠くことのできない必須な微量栄養素(必須微量元素)として非常に重要である。