human and environment
4-3. データの解析と評価
- ヒトからみた環境 -  玉利 祐三

4-3-3. 有意水準(危険率)
 二つのグループ(母集団)から抽出されたある事柄についての数値・測定値(一つのグループでの標本1、他のグループでの標本2)がある場合、標本1の母集団と標本2の母集団が一致しているかどうかを調べる場合(仮説検定)、標本1及び2の母集団には差がないという仮説(帰無仮説)をたて、この仮説のもとに標本1及び2の差が生じる確立を求めます。

 この確立がある値より小さいとき(通常、有意水準p<0.05 またはp<0.01、換言すれば危険率5%または1%)、非常にまれなことが起きたのだから、それは最初にたてた仮説(帰無仮説)が間違っていると判断し、その仮説を棄却し、反対の仮説(対立仮説)を採択します。この基準となる確立を"有意水準"または"危険率"といいます(縣 俊彦、やさしい栄養・生活統計学、南江堂、1997)。

 ただし、この"有意水準"には注意しなければなりません。例えば、有意水準p<0.05、危険率5%で仮説を棄却するということは、その仮説を棄却することが過ちである確率が5%もあることを意味します(岡崎 真、栄養調査・研究のための図解統計学、医歯薬出版、93頁、1996年)。

 ある動物試験で、正常食グループとある化学物質を与えた食事グループで、血液中のある成分濃度を調査したとき、p<0.05で検定した結果、両グループで有意な差が認められたというような場合は、確かに"学術論文として正しい"のですが、この結果は"100%正しいとは言えない"のです。つまり、この実験を100回繰り返して行ったときに、95回は差が認められるが、5回は差が認められない結果が得られる確率であることを理解してほしいのです。結果に対して100%の保証はないのです。

 このような一定の有意水準で、あるグループと他のグループで測定値に差が認められるかの検定(t検定、F検定)が医学、栄養学などでよく用いられています。この場合、同じデータであっても、有意水準pの値を変えて算出・検定すれば、反対の結果が導かれることもあり、そのため逆の結論が得られる場合もあるのです。

 つまり学術論文などで掲載されている場合でも、データの見方によっては評価が異なることもあるわけです。その検定方法では、ある結論が導かれていることも正しいし、上述のように解釈・評価によっては、その結論が導かれていないとするのも正しいのです。