human and environment
6. 地表温度を推定する物理模型
- 私たちの住む地球 -  太田 雅久

平衡温度がどのように決められるかを物理学的に理解しよう

そのためには、物体が熱せられたときに放射する光のスペクトルと放射量を定量的に知らないといけない。

光は電磁波である。

電磁波はその名の通り、電場と磁場がそれぞれある関係をもって振動している波で、空間を伝播する。


M.Alonso and E.K.Finn Fundamental University Physics(Addison-Wesley,1969)


従って、光は分子に当たると電磁気的に作用して、エネルギーが充分にあれば、分子をこわしてしまうこともある。

所で、物体が温度Tに熱せられると、温度Tに固有な特有のスペクトルをもつ光を放射する。

温度が低いと赤黒く見え、さらに温度が上がると彩度を増し、鮮やかな赤から白味を帯びてくる。

もっと高温になると青白く光る。

温度が有限であれば必ずそこから光を放射している。

太陽の表面6000°Kと地球の表面288°K(0℃は絶対温度の273°Kにあたる)から放射される光のスペクトルの違いを、横軸に波長をとって較べてみよう。



太陽光は皮膚ガンのもととなるといわれている0.4μm以下の紫外線と1μm以上の赤外線の他、主たる光は私達の視覚にうったえる可視光である。

これにくらべて、地球は、その表面温度が低いため放射する光は遠赤外光がほとんどである。

従って、入ってくる光は可視光で、夜間、宇宙に向けて放射されるのは遠赤外光である。

所が、大気中のCO2 やH2Oはその分子構造上、遠赤外線を吸収して振動運動にかえる。



振動による励起状態にあるCO2 やH2Oは再び遠赤外線を地表に向けて放射し、もとの基底状態にもどる。

CO2やH2Oは地表から出てゆく熱線を宇宙にのがさないような役割を果たしていることがわかる。

この理由により赤外線や遠赤外線を吸収するガスが温室ガスと呼ばれている。


木村龍治、立て平良三、西田弘「うずまく大気と海」


このことは太陽の入射光が大気を通過するとき、1μmよりも長波長の赤外線をどの程度吸収するかを見れば理解できる。


E.Boeker and R.von Grondelle Environmental Physics (John Wiley,1995)


1μmよりも長波長側で、特に1.4μm、1.9μm、2.6μm以上の所で、ほぼ完全に吸収されている。

地表から放射される光は10〜20μmの遠赤外線が中心であるが、この波長帯は、H2O 、SO2、NO2、CO2、NH3等我々になじみ深い分子の振動運動による赤外線吸収帯になっている。