human and environment
3-4. エアロゾルの濃度
- 環境汚染 - 松田 八束
最も一般に計測されるエアロゾルの特性であり、健康上、また生活環境への影響の面からも、最も重要な特性は質量濃度である。質量濃度は、エアロゾルの単位容積中の粒子状物質の質量を表しており、常用単位はg/m3, mg/m3, μg/m3である。質量濃度はエアロゾルの密度に相当するが、密度という表現は、粒子密度と混乱するおそれがあるので使われていない。よく使われるもう一つの濃度尺度として、個数濃度がある。個数濃度はエアロゾルの単位体積あたりの粒子の個数を表わしている。常用単位は個/cm3,である。アメリカではそのほかに、個/ft3とmppcf(million particles per cubic foot: 108個/ft3)も用いられる。
気体状汚染物質と異なり、エアロゾルに対しては、容積ppmまたは質量ppmは使われない。これは、エアロゾルが二相系になっていること、およびこの方法で表現すると、エアロゾル濃度が非常に小さな数値になってしまうためである。しかしながら、表1.2に示したように、いくつかの標準濃度をこれらの方法で計算しておくことは、有効である。例えば、煙突の煙は、容積基準では99.999%清浄な空気ということができる。
表1.2 質量濃度をppmで表わした例(単位密度の球と仮定) |
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質量濃度 質量/体積 (mg/m3) |
容積 ppm 体積/体積 (ppm) |
質量 ppm 質量/質量 (ppm) |
米国環境空気清浄基準 |
0.08 |
8×10-5 |
0.07 |
有害ダストの閾値 |
10 |
0.01 |
8 |
未処理の煙突排出物 (典型的なもの) |
10000 |
10 |
8000 |
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早川 一也監訳、ウイリアム C.ハインズ著 「エアロゾルテクノロジー」 井上書院(1985)
上記の図は、実際にわれわれが取り扱うエアロゾルの濃度範囲が、いかに広いものか(10-13〜103g/m3)を示している。
- 問題 1
*****のところに適当な術語を入れて文を完成しなさい。
- 分散相である粒子の性質は、粒子の形、大きさ、密度、粒子数濃度などの物理的因子とその化学的組成とによって決まるが、その物理的挙動に支配的な効果を及ぼすのは、(1)*****と(2)*****とである。とくに微小エアロゾル粒子においては、形状に起因する特性は、凝集粒子を問題にするような特別の場合を除いては問題とはならず、通常球形として取り扱ってよい。
解答:粒径(または粒度分布)、粒子数濃度
- 問題 2
*****のところに適当な術語を入れて文を完成しなさい。
- 粒径については、図1.1に示すように分子またはイオンの大きさに近い*****程度から*****程度まで、おおむね105の広範囲のものを取り扱う。とくに0.1μm前後の大きさのものは、分散媒である気体分子の平均自由行程や可視光線の波長とほぼ同等であり、したがって、0.1μm程度を境界としてそれ以下の粒子とそれ以上の粒子とでは、その動力学的取り扱いや物理現象にかなりの差異がある。
解答:0.001μm、100μm
- 問題 3
エアロゾルの質量濃度が10mg/m3であるとき、直径1.0μmの粒子は1cm2中に何個存在するか。ただし、粒子の密度を1g/cm3と仮定する。また、個数濃度(mppcf)はいくらになるか。
- 問題 4
一本のフィルターのない紙巻きタバコを喫煙するとき、喫煙者は、タバコの煙粒子20mgを含有するエアロゾルを、350ml吸い込む。もしこれらの粒子が、直径0.4μmの単位密度を有する球であるとするならば、喫煙者は1本のタバコから何個の粒子を吸い込むことになるか。またこの煙の質量濃度はいくらになるか。この煙の濃度と米国環境空気清浄基準(NAAQS)の年平均値である75μg/m3と比較せよ。
- 問題 5
直径0.1μmの水滴は何個の分子から成っているか。
- 問題 6
直径5cmの球形の石炭を、直径0.1μmの球形粒子に分散させた場合、その表面積は何倍になるか。
- 問題 7
喫煙者は、一本のタバコから約20mgの煙粒子を吸い込む。煙粒子を直径0.4μmの単位密度球粒子とすれば、その表面積は全体でいくらになるか。
- 問題 8
物質1gあたりの表面積を粒径の関数として表わす式を導け。ただし、その物質は、直径d、密度ρ=1g/cm3の球形粒子から成るものとする。また、粒径0.1μmの粒子1gあたりの表面積はいくらか。
- 問題 9
エアロゾル粒子を巨大な気体分子だとすれば、密度1.0g/cm3、粒径1.0μmの粒子から成る「気体」の分子量はいくらか。
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