human and environment
4. エアロゾルの働き
- 環境汚染 -  松田 八束



A. エアロゾルの人体影響

臨床医学的調査
 日本の四大公害病の一つ「四日市喘息」や、光化学スモッグ被害に際しても、その原因物質の一つとして疑われてきた。エアロゾルの人体影響は、エアロゾルの計測が難しく、最近、装置設備が整うようになっていろいろの影響研究が進んできた。

参考文献
大気環境学会、環境庁、東京都、公害健康被害補償予防協会、“大気中微小粒子と健康に関する国際シンポジウム”、1999年7月6-7日
Klaus Willeke, "Generation of Aerosols and Facilities for Exposure Experiments", Ann Arbor Science (1980)

疫学調査
 米国粒子状物質に関する環境大気質基準(150μg/m324h;50μg/m3年平均)以下に十分外挿した濃度レベルで見られた影響には明白な閾値は検出されなかった。

相対リスク:PMだけをモデルに入れた場合、PM関連の日毎の死亡率はおよそ1.05-1.15(5-15%のリスク増加)と推定される、がしかし、他の汚染物質をモデルに入れた場合、50μg/m3のPM10の増加に対してリスクは典型的には〜1.03-1.05(3-5%増)にまで低下する。長期のPM曝露の疫学研究からは、これより幾分高い相対リスクが導かれた。しかしながら、死亡の早期化は明白ではない---2〜3日、月、年?

PM NAAQSの将来の再検討を支持するための人体健康リスク評価に関する粒子状物質の研究ニーズ(EPA/600/R-97/132F)、1998年1月、環境評価に関する国立センター、EPA,リサーチ・トライアングル・パーク、NC27711(ray.diane@epa.gov

環境大気中粒子状物質に関する研究優先順位:1.直接的優先順位と長期の研究の一覧表、1998.国の研究評議会(NRC)、ナショナル・アカデミー・プレス、2101 Constitution Avenue, NW, Washington, DC 20418(vandenberg.john@epa.gov

粒子状物質に関する研究におけるHEI(健康影響研究所)計画総括、1999年、HEI、955 Massachusetts Avenue, Cambridge, MA01239(jwarren@healtheffects.org)

(http://www.healtheffects.org →)


放射線・放射線の人体影響
 放射性エアロゾルの人体影響について、チェルノブイル事故の教訓を知ることは大切である。エアロゾルの挙動特性の上に、放射線の特性が重なっているので、まず放射線の簡単な基礎知識について述べる。

  ・電離放射線による放射線照射効果の機構
  ・各種放射線のエネルギー付与
  ・低エネルギー放射線のマイクロドシメトリー
  ・放射線防護で用いられる線量単位
  ・リスク
  ・チェルノブイル事故における被爆線量とリスク
  ・事故の概要
  ・被爆線量
  ・放射線の人体に与えた影響
  ・あとがき

参考文献
松浦、朝野等訳、“放射線と放射能”、学会出版センター、1996年
One Decade after Chernobyl: Summing up the Consequences of the Accident. 96-02659, IAEA/PI/D5E, July 1996.
V.ラムザエフ、放射線科学 No.8、放射線医学総合研究所(1997)



B. 酸性雨

はじめに
 酸性雨とは、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)といった大気汚染物質が大気中で硫酸や硝酸などに化学変化し、雨・雪・霧などに溶け込んだ形で沈着したり(湿性沈着)、ガス・エアロゾルとして直接地上に沈着する(乾性沈着)現象のことである。その結果、森林、土壌、湖沼における生態系への影響をはじめ、建造物の劣化や人体への影響が懸念されている。



 酸性雨はまた、その原因物質の発生源から数千キロも離れた地域にも沈着する性質があり、国を越えた広域的な現象である。このため、酸性雨問題の解決には各国が協調して取り組まなければ効果的な対策はできない。既に欧州では、1979年に長距離越境大気汚染条約が締結され、酸性雨の状況の監視・評価、酸性雨原因物質の排出削減対策などが着実に進められている。

 1992年に開催された「環境と開発に関する国連会議」で採択されたアジェンダ21においても「欧米における取り組みの経験は継続・強化されるべきであり、世界の他の地域にも分け与えられるべきである」と指摘されている。

  ・東アジア地域の状況
  ・第1回政府間会合の開催
  ・試行稼働活動の実施
  ・試行稼働期間中の組織
  ・酸性雨モニタリングの内容と今後の活動スケジュール

東アジア酸性雨モニタリングネットワーク
暫定事務局 環境庁大気保全局大気規制課
〒100-8975東京都千代田区霞ヶ関1-2-2
Tel.(03)5521-8294 Fax.(03)3580-7173 E-mail: interimsec@eanet.go.jp

暫定ネットワークセンター、酸性雨研究センター
〒950-2144新潟県新潟市曾和314-1(新潟県保健環境科学研究所内)
Tel.(025)263-0550  Fax.(025)263-0551 E-mail: adorc@po.next.ne.jp


C. 視程

 昭和30−40年代の高度経済成長期の大気汚染の酷い頃には、大都市の煙突からの煙で青空の全く見えない日が何日も続いた。このころを振り返ると、灰色の空が人々に与える精神的な影響は大きなものがあった。視程の価値は、数量化することが困難であるが、それを直接的な価値に置き換えている例がある。それは、アメリカの国立公園の例である。アメリカ西部の国立公園は、風向明媚で名を売っているが、遠方から流入する微小エアロゾルによって、その視程が著しく低められており、せっかくの遠望の価値が台無しになって、観光客が激減した。これに対して、国立公園サービスの担当局は、視程を取り戻す努力をし続けている。




D. 気候

 二酸化炭素が温室効果によって、地球の温暖化を引き起こしているのとは対照的にエアロゾルは、太陽光を反射散乱することによって、温暖化を引き留める役割を果たしている。


宇宙開発事業団(NASDA)提供