human and environment
2-1. 水田の役割 
    - 生命の水源、保水、地下水、防水害、CO2 削減の効果 -
- 環境と文学 -  高阪 薫

水田の持つ意味

 水田の意味は生産面だけにとどまらない。夏の多雨を制御する偉大なダムの役割を果たし、治山治水の要となる。森林や畑地に比べて地下水涵養機能を持つ。水田と水路は、コイやフナ、タニシやウナギを育て、ハレの食事の貴重な動物性タンパクを供給する。赤トンボやホタルなどの多くの水棲昆虫や動物達の貴重な生息環境を提供し、酸素を供給し、美しい景観によるレクリエ−ション機能もある。
 農林水産省の試算によれば、コメ生産による収入は2兆円だが、こうした有形・無形の貢献を金額に換算すると約4兆6000億円(洪水防止機能1兆9000億円、農村景観保全とレクリエ−シヨン空間快適維持機能1712億円、水資源涵養機能740億円など)にもおよぶという。 (片野 学「有機農業ハンドブック」P79.「有機稲作の特徴と課題」日本有機農業研究会編集・発行 農文協)

 農業の有する多面的機能の計量評価 (代替法)
機能 評価の概要 評価額(億円/年)
全国 中山間地域
洪水防止機能 洪水被害の軽減 28,789 11,496
水源のかん養機能 安価な地下水の供給 12,887 6,023
土壌侵食防止機能 土壌侵食による被害の軽減 2,851 1,745
土砂崩壊防止機能 土砂崩壊による被害の軽減 1,428 839
有機性廃棄物処理機能 食物残さ等の
産廃物処理費用の軽減
64 26
大気浄化機能 大気汚染ガスを
吸収し大気を浄化
99 42
気候緩和機能 夏季の気温低下 105 20
保健休養・やすらぎ機能
(文化的機能)
都市住民訪問による価値 22,566 10,128
合計   68,788 30,319
農業粗生産額(9年)   99,886 36,707

(資料)農林統計協会 平成10年度「農業白書」P21



 農民は、米作りをやめて、外国産米の輸入に頼れ、と世界の産業分業化を唱える国際経済学者がかつていた。日本の工業化と農村のリゾート化促進を、バブル期には主張した。
 このコメントが現実になれば日本の農業は潰れてしまう。日本の景観を無くす。田圃にみられる人間と自然との共生が無くなる。田圃のもつすばらしい機能が無くなる。日本人の精神形成のシンボルを無くしてしまう。勤勉、努力、正確、几帳面を無くす。