human and environment
4-1. 米の現状 -米の自由化、ミニマムアクセス、関税
   化、減反政策、自給率の変化と備蓄米、農業従事
   者の問題-
- 環境と文学 -  高阪 薫

 いま米問題でとりあげられている主な事項について解説しておこう。なにが問題で、今後どうするべきか考える糸口としたい。

ミニマムアクセス
 1993年末当時の関税貿易一般協定(ガット)のウルグアイ・ラウンドで、日本はコメの輸入関税化の猶予と引き換えにミニマムアクセス(最低輸入義務)を課せられた。初年度の95年度426千トン(玄米ベ−ス)から年々増量させ、2000年度には852千トンになる。ところが、このミニマムアクセスは日本に課せられた「義務」という性格から、輸出国にとっては「努力なしに売れる保証」となり、ただでさえあまり気味の国産のコメに拍車をかける形で在庫量を増やすことになった。1998年10月末の在庫は344万トンで、適正在庫(150万〜200万トン)を大幅に上回っている。ただし、ミニマムアクセス米は、用途を加工、飼料用に限定し、主食用には流通させられないので、年々在庫が増えている。海外への援助米としてさばくほか消化しきれない状態である。
(朝日新聞 1999年4月7日 記者ノート 岡部 漱介 「米の関税化農政改革急げ」)

米の自由化
 1999年4月からコメの輸入許可制が廃止され、関税さえ払えば誰でも自由にコメを輸入できることになった。当初の関税は、1K当たり351円17銭と、現在の外国産主食米の輸入価格のほぼ3倍に相当する。この高率では関税化に伴うコメの輸入は「ほぼゼロ」と農水省は見ているが、今後2001年以降に世界貿易機構(WTO)の関税交渉で、引き下げを要求されることは避けられないであろう。(これは、年々増えるミニマムアクセス米から逃れるための窮余の策ともいえる。)
(朝日新聞 1999年4月7日 記者ノート 岡部 漱介 「米の関税化農政改革急げ」)

農業従事者の問題
我が国の農業労働力は減少と高齢化が進行し、農業の体質は弱体化しつつある。このため、専業的な農業者など意欲ある担い手への施策の集中化を図るほか、集落営農の活用、第3セクタ−、農業サ−ビス事業など地域の実状に応じた担い手の確保、育成が必要となっている。1997年の新規青年就農者は9700人となっている。離職就農者は40才から60才以上までの人に増加傾向が見られるが、高齢化の要因にも繋がっている。


(資料)農林統計協会「農業白書」より

食糧の備蓄・・・・
 昭和47年の世界的な異常気象による食料需給の逼迫を契機に、48年度から50年度にかけて輸入依存度の高い食糧用小麦(年間外麦需要の約2.6ヶ月分)、飼料穀物(配合飼料主原料の年間需要量の約1ヶ月分120万トン=とうもろこし、こうりゃん80万トン、大麦等40万トン)、食品用大豆(食品用大豆の年間需要量の約20日分5万トン)についての備蓄制度の整備が行われた。米は1993年の大不作に伴う緊急輸入などの経験を踏まえ、「主要食糧の需給および価格の安定に関する法律」のもとで、150万トンを備蓄することを基本に定めている。

 我が国の食料備蓄制度の概要
150万トンを基本し、
一定の幅をもって運用
国(食糧管理特別会計)
食糧用小麦 年間外麦需要の
約2.6ヶ月分
国(食糧管理特別会計)
飼料穀物
(合計)
配合飼料主原料の
年間需要量の約1ヶ月
(120万トン)
 



とうもろこし、
こうりゃん
80万トン 配合飼料供給安定機構
大麦等 40万トン 国(食糧管理特別会計)
食品用大豆 食品用大豆の
年間需要量の約20日分
(5万トン)
(社)大豆供給安定協会
注:飼料穀物、食品用大豆の数量については、10年度末実績見込みである。

(資料)農林統計協会「農業白書」より


減反政策・・・・
 米の生産調整については、2000年10月末の国産米在庫を適正備蓄水準までに縮減することを目指して、2年間かけて取り組むことを目標に、1998年度の生産調整目標面積(減反面積)は96万3千ha(9年度の78万7千haに比べると17万6千ha拡大)とした。生産調整地には大豆、麦、飼料作物等のほか、果樹、野菜などを植えることで助成金が交付されるが、減反地がそのまま放棄される例も少なくない。国民の米の消費量が年々下がっている状態では減反しても米あまり現象は解消されない。米の生産農家は、国民一人が1日に茶碗半分だけ多くご飯を食べれば、減反をしなくても済むのにと語っている。

 供給熱量品目別構成比
  米(%) 畜産物(%) 油脂類(%)
1960年度 48.3 3.7 4.6
1998年度 24.7 16.5 14.4

米により供給されていた熱量を畜産物や油脂類が
代替していったという構図がうかがえる。