human and environment
4-4.有機農業と慣行農法の違い
- 環境と文学 -  高阪 薫

有機農業
「有機」という言葉は、「生きていること」、「生きる力のあること」という意味です。自然は生命に満ち、生き物は自然の秩序の中で生かし生かされています。自然の恵み(土、太陽、空気、水)の中で、さまざまな動植物(微生物、小動物も含めて)の生きる力を活かして、人間の食べ物を作るのが農業です。有機農業と農薬や化学肥料を使って作る慣行農業の違いを表にしてみました。

 有機農業と慣行(化学)農業の違いのめやす
比較項目 有機農業 慣行(化学)農業
肥料 堆肥、緑肥、液肥、ボカシ肥 化学肥料(最近は有機物や、微量要素を混ぜたものもある)
作付け 少量多品種(沢山の種類を少しずつ栽培する)を、輪作(作るものを、順繰りに変える) 単作(1種類を広い面積に作付けする)と、連作(毎年同じ物を作る)
病害虫
対策
混作、自然の天敵利用、木酢等天然素材を利用する。防虫ネット、在来種等の耐病性品種を使う。 農薬散布、(殺虫剤、人工的な天敵利用、殺菌剤等)、無菌室、防虫ネット等
雑草対策 手で取る、ワラマルチ、アイガモやコイ、ザリガニ、れんげマルチ等 除草剤、ビニ−ルマルチ(ポリマルチ)等
連作障害
対策
輪作、混作、共栄作物、緑肥の利用等 農薬(土壌消毒)、天地返し、客土等
生産物 自然な味、日持ちが良い、体に良い。形が不揃い。虫食いがあるものもある。 味が悪い、日持ちがしない。残留農薬があると、体に良くない。虫食いがなく、形や大きさが揃って、見た目にきれい。
(「土と健康」 1999・8.9月号 P17・22 日本有機農業研究会)





環境にやさしい除草法(水田の場合)

アイガモによる除草
 田植え後10日頃から出穂までの間、アイガモを水田に放し飼いして除草をする。除草のほかにも、有機農業にかなった効果がある。 反当たり(10ア−ル当たり)20~30羽のアイガモを水田に放す。雑草防除(草を食べる)、害虫防除(アカムシ、ウンカなど)、養分供給(アイガモの糞がイネの養分になる)、中耕(耕起・アイガモが絶えず動きまわることにより、嘴と足で泥水の状態を作り出しフルタイム代掻きの状態)。ジャンボタニシの駆除など。
(古野隆雄 「合鴨ばんざい」農文協)


コイによる除草
 長野県佐久地方で行われている、水田養鯉の方法。田植え後1~2週間以内に全長10~15cmの当歳ゴイ(孵化後、1シ−ズン飼育されたもの)を水田に放つ。10ア−ル当たり300匹がめやすとなるが、条件によってかなり差はある。除草効果をもたらす主な要因は、コイがエサを求めて水底の土壌ごと飲み込むことにより、雑草が浮かされて枯れる。こうしたコイの行動が水を濁らせ、雑草の光合成を阻害する。コイが泳げるような深水管理とあいまって、雑草の生育を抑えることになる。除草、抑草効果を高めるためには、水田土壌の表面からいかに早く盛んにエサを摂るらせるかがポイントとなる。
 副次的効果として、深水にするから冷害に強いほか、イネミズゾウムシやドロオイムシが激減するというような害虫防除効果もある。
大塚 献三(「有機農業ハンドブック」P120 農文協)


レンゲマルチによる栽培 (山形県高畠町の場合)
    1. 稲刈り前の落水直後に、レンゲを10ア−ルあたり1~1.2キロ播く。
    2. 翌年の5月中旬レンゲが満開になった時に、田んぼに水を引く。
    3. 田んぼは部分耕起し、レンゲを残したままで苗を植え付ける。
    4. 3週間ぐらいで、レンゲの形はなくなり、地表には黒いベッタリしたものが張り付いている。それが浮き上がって水面を覆い、日光を遮断するため、除草効果をもたらすと思われる。(水の管理は重要。潅水状態を保つことと、水の入れ替えが必要)
    渡部 務(「有機農業ハンドブック」P124 農文協)


ザリガニで雑草を抑える(千葉県三芳村の場合)
 田植え1ヶ月前頃に、田んぼに水を溜め、土中生物・水中生物が棲みつく条件を整える。米ぬかを使用して、乳酸菌や酵母菌が多くなるようにする。水田に生き物たちが多く棲みつくと、つねに地表を動かすので水が濁り、雑草の発芽を抑える。ザリガニの存在は大きく、どう棲みつかせるかがポイントとなる。早めに水を溜めると、田植え前の代掻きまでに藻の一種が発生し、生き物の棲む条件として大きな役割を果たす。
 ザリガニは水の深い所に集まる習性があるので、できるだけ平らに整地し、水の深い所を探して行ったり来たりさせることで、除草の効果が均一になる。
和田 博之(「有機農業ハンドブック」P128 農文協)


田畑輪換の効果(兵庫県市島町の場合)
 有機農業は雑草との闘いといわれる。水田にせよ畑の野菜にせよ、大変な労力がかかり、放置しておくと収量にも影響が出る。
 3~4年の間野菜を作り、水田に戻すと、ほとんど雑草は生えない。ただし、それに気をよくして稲を作り続けると、たちまち大量の雑草が生えてくる。水田の雑草は生命力があり、発芽の準備をしているからであろう。畑に長い間しておくと、水田にした時水もれがはなはだしい。野菜を2年作り、稲を1年作る田畑輪換が一番効果的といえる。
一色作郎(「有機農業ハンドブック」P130 農文協)