human and environment
3-2.「天なる父」と「母なる大地」
- 環境とコスモロジー 北米先住民の砂絵から - 久武 哲也
![]() 「祝福の道」の砂絵の天父と地母 ナバホの人たちの基本的な考え方は、マザーアース・ファーザースカイ(Mother Earth, Father Sky)という言葉に代表されますように、いろいろな儀礼のときにも、天空と大地がペアになっている砂絵が描かれます。聖なる山も、東の白、南の青、西の黄色、北の黒、この四色を使って表現されます。 砂絵には、それぞれチャント(Chant)と呼ばれる歌がついていますが、まず第一番目に描かれますのは、ヤディルヒット・シタという男性としての天空を描いた砂絵です。「シタ」は「父」という意味です。それと同じ砂絵の中に地母も描かれます。地母は、ニホスザン・シマと呼ばれます。「シマ」は母という意味です。この地母の体内には、四つの聖なる植物が描かれます。砂絵の上の方が東になりますが、砂絵では四つの辺の東だけが開けてあります。この東の方にトウモロコシが伸びています。そして、タバコ、マメ、スクワッシ(squash)と呼ばれるアメリカ・カボチャ、これら四つの聖なる植物が地母の体内に描かれます。右側には天空が描かれますが、そこに北極星と南極星が描かれます(南極星があるのかどうか知りませんが)。これが、「天空」、つまり「父なる天空」の心臓を形づくっています。絵の下の方には線が引っ張ってあります。 ![]() 「男性を射る歌」の砂絵の天父と地母 これが「花粉の道」です。外側の境界線が、世界の境界線になるのですが、これは「虹」です。 さきほどのバゾノーダのおばあさんの証言で、花粉を与えると言っていますが、トウモロコシの花粉を与えるのは、天と地を結ぶためなのです。この花粉(トウモロコシの花粉)をまくということが祈りのときには非常に大事なことなのです。こうして、天と地を結ぶために必要なのが花粉の道です。砂絵の花粉の道は、大地と天空を結んで結合している状態を表しています。 「祝福の道」と呼ばれる砂絵でも、地母と天父が描かれますが、地母の体の四隅に四つの聖なる山が描かれ、それぞれの上に四つの色の雲が東西南北に描かれます。「ホゾ・オジ」という儀礼のときに描かれるものです。 |