human and environment
3-3.美の道の砂絵
- 環境とコスモロジー 北米先住民の砂絵から -  久武 哲也

 「美の道」という砂絵は、九日間治療を行なうときに一番最初に描かれるものですが、やはり天父と地母の姿が描かれています。


「美の道」の砂絵の天父と地母


 私が興味を持っていますことは、どの砂絵にも、大地そのものが、地母の体内に入っているということです。マザーアース(母なる大地)というものが、現実にこういう姿で砂絵のなかに描かれていきます。世界はニィ(ni)という言葉で呼ばれますが、地母の体内にニィと呼ばれる世界、ナバホの土地が全部入っているのです。

 この美の道の砂絵を描いたグレイ・スクウォーレル(Grey Squirrel)、「灰色のリス」という名前の人が、説明したものを紹介しておきます。


「美の道」の地母


 「地母の頭部、角の先端(A=太陽)を彩る青はトルコ玉、それは世界の豊穣を意味する。角の下の黄色は花粉、この世界の永遠の生命を具現する。両方の角の間の青い円(太陽)の背後の五本の棒は、東の方の光、地母の顔の四つの帯は自、黒、青、黄色で、それぞれ夜明け、暗闇、夕暮れの霞、黎明を意味する。顔の両側の上部は赤、それは植物の二番生え、下部の黒は暗闇、のどの赤い帯は青空のなかの風と雲、ひじの赤と青の線は植物の開花、地母の手に握られた容器は食料と薬草の種を運ぶもの、その上の白と黒の線はあらゆる種類の植物の花を意味する。網状の模様はトウモロコシの実、トウモロコシの幹茎(背骨にあたる)は大地の背骨と食料、トウモロコシの穂の左手の山(D)、これは東の方の聖なる山、シェラ・ブランカ、それは大地の心臓である。その山頂の黄色い丸は薬草(線が引いてありますが、薬草は聖なる山から取ってきます)、トウモロコシの右手中央の出入(G)は南の聖なる山、テイラー山である。肝臓の一方側にあたる。左手下の山(H)は北方の聖なる山、ラプラタ山である。もう一方の側の肝臓。ラプラタ山の近くの小さい峰(F)はエル・フェルファーノ、地母の腎臓である。右手下の山(J)は西方の聖なる山サンフランシスコ峰である。地母の膀胱である。」

 ですから、有名なグランド・キャニオンは、ナバホの人々にとりますと、地母の子宮にあたる部分です。「大地を走る黒い線(T)は水と水脈、それは血を意味する。トウモロコシの毛穂(C)、これは肺、その基部の黒い丸(E)、これは大地の息を示す。大地の息、すなわち呼吸する風である。地母の子宮部の黒の四角は太陽の妻(月=B)の家、その上の三角印は雲(K)、子宮の白い丸は月、月から西方に放射する黄と白の五本の線は最初の男と女、その背後の灰色と赤の縞模様は虹と雲と霧、地母を取り囲む灰色はすべて大海の水である。」

 ナバホの人たちの世界は、こうして地母の体内世界として語られます。これを一般的には比喩だと言います。ナバホの言葉では、母をシマと言いますが、しかし、ナバホの人たちは、トウモロコシ畑も、羊の群れも、メサの下の土くれといったものも、そして本当の肉体的な母も、大地の母も、みなシマと言います。そこには、単純に比喩的と言ってしまえない側面があるのです。