human and environment
4-2.地層と4つの世界
- 環境とコスモロジー 北米先住民の砂絵から -  久武 哲也

 グランド・キャニオンへ行きますと、先カンブリア(Pre-cambrian)期の地層から現在の第四紀の地層までずっと続く地層が見えます。そして、その一つ一つの地層がまたニィと呼ばれます。ニィは世界という意味です。ニィは、世界と地層の両方を指します。ナバホの人たちは、水平的な世界では、東の聖なる山を白の世界、南を青の世界、西の方を黄色い世界、北を黒の世界と考えます。この四つの聖なる山に囲まれた土地が、ディネ・ター、すなわちナバホ族の土地なのです。ところが、地下の世界からいきますと、大地の地母の子宮からだんだんと成長し、四つの世界を経てはじめて白の世界、地表の完成した世界に出てきたと考えています。下の世界は、黒の世界、青の世界、黄色の世界です。そして、それぞれの地層が、そうした一つの世界なのです。よく考えると確かにそうです。一つの地層は、かつては地表の世界であったのです。それが堆積して、いまの自分たちの世界があるというわけです。

四つの世界

 コスモゴニーという発生神話的なものの中でも、地下の世界から人間やさまざまのものが発生してくるプロセスが、地母の体の一番下の足から上がっていく形で語られます。足の方から、黒の世界、青の世界、黄色の世界、白の世界、そしてその上はトウモロコシの世界になります。水平的な世界のコスモロジーとともに、コスモゴニーという発生神話的なものも、地下から一つ一つ登っていく垂直的な世界の変化の過程として、同じ地母の身体の中で構造化されています。

 これが規格化されてくると、部屋というか、エモクビー(洞穴とかお腹のなかの空いているところという意味ですが)に分かれ、その間にハシゴが掛けられるような形の砂絵になります。儀礼や歌では、トウモロコシの穂が一つ一つ成長していって、それに応じて儀礼が積み重なるというプロセスになります。

 ところで、いま神話という言い方をしましたが、ナバホには元来神話というまとまったものはありません。砂絵には、歌、チャントがついていて、それが必ず四つのリフレインを持っています。東の山、南の山、西の山、北の山に花粉を注いで、東の聖なるトウモロコシ、南の聖なるカボチャ、西の聖なるワタ、北のタバコ、そして東の聖なる木スプルース、南の聖なる木ピニオンというふうに言って、植物、木、動物が続いていく。その間に、砂絵が描かれます。こうしたチャントが、本来私たちがいう神話にあたるものを語っています。それを白人の研究者が、一つのストーリーに書き直したものが、ナバホの神話と呼ばれているものなのです。