human and environment
2-2.延命医療、救急医療の可能性とその限界
- 医療環境と生命倫理 -  谷 荘吉

 延命・救命が可能であるかどうかの決定的因子は、生命危機の原因となっている病因に直接の関係がある。重症者は、入院治療の対象となる。一般には、医療水準が高くなっているので、大抵の急性疾患は治療が可能で、そうたやすくは失命はしない。しかし、一方で、先天性の病気とか、難病とかで、例えば、臓器移植による延命治療でなければ、致命的な危機を迎えざるを得ない病気も少なくない。最近話題になっているような、心臓疾患で心臓移植とか、肝臓の重症疾患の場合に、肝臓の移植手術以外には、延命の可能性が無い病状が存在している。かかる移植手術は、術後の拒否反応などの対応を含め、極めて高度な医療技術が必要である。


生命と医療

 また、進行末期がんの病態では、がんに対する治療が無効で、症状緩和だけしか有効な処置が殆どないという状況がある。長期延命が不可能で、比較的短期間に死の訪れを避けることが出来ない場合に、どう対応するかが問われることになる。その際には、病名告知の問題が深刻な課題となる。インフォームド・コンセントを含め、本人の死生観が関係して来る。鎮痛療法を主として、症状を緩和するホスピスケアが選択肢の一つである。

 現在、健康保険法による診療報酬体系で定額制が認められている緩和ケア病棟(ホスピス病棟)は、1999年6月現在、全国で、62箇所に及んでいる。