human and environment
3-4.臨床現場のバイオエシックス(パターナリズム、
 安楽死、ターミナルケア、ホスピスケアなどの問題)
- 医療環境と生命倫理 -  谷 荘吉

 1960年代以降の世界情勢の変化の中で、主として、米国での消費者運動の中から発生したバイオエシックスの考え方は、最終的に、医療を受ける際の自己決定権に到達することになった。従来、医療は、ヒポクラテスの誓いを医の最高倫理とする医師の良心を全面的に信頼した、パターナリズムによる医療が展開されて来た。しかし、医療は、医師が一方的に押しつけるべきものではなく、受療者の医療ニーズに従って、医療行為の選択肢のな中から、受療者の自己決定に基づいて、選択した医療を提供されるのが、医療の本質であるとされるようになったのである。

 インフォームド・コンセントが重要視されるようになった所以である。

 しかし、一方で、「愚かなる選択」とか「自己決定の困難な選択」とかの問題が出現している。その中で、最大の難問は、「安楽死認容」の課題である。

 欧米諸国では、「安楽死」が認められている国があるといわれているが、その情報は、付帯事項が省略されていて、そのまま鵜呑みにする訳けには行かない。

 ターミナルケアやホスピスケアの充実によって、身体症状の苦痛緩和の医療が極めて進展したので、「殺して欲しい、苦痛に耐え難い」といった訴えをする病状に対応できないのは、症状緩和医療の貧困であるとさえいわれるようになってきている。

 従って、いかなる理由であろうとも、安楽死(安楽殺)を許容することは出来ないというのが、筆者の意見である。