human and environment
4-1.心の環境
- 医療環境と生命倫理 -  谷 荘吉

 現代社会における都市環境の中での日常生活は、ストレスに満ちていて、子供から大人まで、それぞれの年代において、医学的な特定の精神病というのではなく、「心の病い」とでもいえるような、「精神的不安定状態」に陥っている人々が少なくないと思われる。こうした、現代社会の生き甲斐喪失を思わせるような、精神社会の歪みは、一体何を物語っているのであろうか。一言でいえば、都市社会における家族生活の核家族化と生活環境の複雑化が原因と思われる。例えば、登校拒否、家庭内暴力、幼少年の凶悪犯罪などの増加傾向は、これだけ物質的生活水準が豊富になった現在の社会にとって、何を意味しているのであろうか。老人福祉の貧困を象徴するかのように、老人自殺者が特に、女性では、世界一だといわれているのは、一体何故なのであろうか。

 いずれにしても、日本においては、精神的な悩みを抱え、苦しんでいる日常障害者については、カウンセリング的アプローチが必要であるにもかかわらず、そうした対応は、欧米に比して、極めて遅れているといわざるを得ない。

 一般論としても、日本国民の文化生活をもっと豊かにするという観点から、人間生活にとって最も大切な精神生活に関して、金権政治主体の国政を抜本的に改革することが必要であろう。日常生活を安寧に誘導できるような、医療環境の整備が急務と考える次第である。