human and environment
4-3.インフォームド・コンセント
    (治療と告知などの医療環境の変化)
- 医療環境と生命倫理 -  谷 荘吉

 欧米では、1970年代から、日本では、1980年代後半から、それまでの、医療者側からの一方通行的医療(医療のパターナリズム)から、医療を受ける受益者の医療ニーズに応じて、受診者側の自己決定に基づく、医療の選択を主体とする医療サービスの提供が行われるという、医療の在り方の一大変革の時代が到来した。これが、インフォームド・コンセントを重要視する医療の変遷である。

 日本においても、現在、日本医師会を中心に、医療現場では、インフォームド・コンセントを重視した医療が行われようになっているが、その本質的意味が十分に理解されているとはいい難い。

 インフォームド・コンセントは、日本語訳として、「説明と同意」という概念が一般的であるが、他に、「説明と納得」とか、「説明と選択」とかの意味に捉えられていることもある。その真意は、いずれにしても、今までの医療者側の善意に基づく医療提供が信頼を失い、医療は、その医療を受ける例の「自己決定」によってその受ける医療の内容を、十分に分かりやすく説明を受けて、その意義を理解し、納得して同意し、OKサインのもとで、医療契約が成立するというように、医療環境の変化が起こったのである。

 特に、がんのような場合によっては、生命の危横となるような、あるいは、最終的に致死に至る運命の進行がんのような病状の場合に、患者本人に、病名をどのように告げるか、そして、がんの治療をどのようにするかといった問題は、まさに、インフォームド・コンセントが最も重要視される臨床場面となるのである。