ところで,環境教育の目的を達成させるため,さらにいくつかの目標を掲げて,その目標を目指したプログラムづくりや実践計画が立てられることがある。特に学校での実践ではその傾向がある。そのようなときしばしば引用されるのがベオグラード憲章にある環境教育の6つの目標である。すなわち、
1.「関心」(awareness),2.「知識」(knowledge),
3.「態度」(attitude),4.「技能」(skill),
5.「評価能力」(evaluation ability),6.「参加」(participation)
初めの「関心」では「人々がすべての環境とそれにかかわる問題に対して関心と感受性を身につける」ことが求められている。ともすると自分を取り巻いている環境などに関心を示さない,いや気づかないことが多い。その第一歩が大切であり,人々が環境や環境問題に「気づき」をもてるような機会をつくることである。また,環境への感受性も大切である。特に小さい年齢のときから身につけさせたい事柄である。この場合の環境には自然環境も人為環境も含まれるのはいうまでもないが,自然環境には人為環境からでは得られないものもあり,後でも述べるように,できるだけ自然との触合いの機会を与えたい。アメリカではそれを目的にした環境教育プログラムが多く開発されている。最近ではレイチェル・カーソンの「センス・オプ・ワンダー」の思想,子どもたちに自然のすばらしさを感じとらせるという考えを盛り込んだ「Teaching Kids to Love the Earth」(1991)なるプログラムも出されている。
年齢が高くなるにつれて2番目の目標「知識」が重要となる。ベオグラード憲章では「すべての環境とそれにかかわる問題や人間の環境に対する厳しい責任や使命についての基本的理解」が求められている。自然環境,人為環境についての,さらにそこで生じている環境問題についてのしっかりとした知識をもち,環境保全のために人間の果たすべき基本的役割を理解してほしいというものである。目標の「技能」はその環境問題解決のための、あるいは環境問題を生じさせないためのものであり,目標の「知識」と一体化している。
目標の「態度」では「社会的価値や環境に対する強い感受性,環境の保護と改善に積極的に参加する意欲などを身に付ける」ことが示され,最後の目標「参加」の「環境問題を解決するための行動を確実にするために,環境問題に対する責任と緊急性について認識を深める」とともに,環境問題解決や未然防止への積極的行動力が求められている。
しばしば,人々は「わかった」で終わってしまうことが多い。環境教育で大切なことは知識や能力の獲得ではなく,その先の実践力であると言われるほどである。もちろん,知識や能力がなければうまくいかない。その意味でも5番目の目標「評価能力」も目標「参加」の前提として必要なことである。この目標は「環境がどのような状況になっているかを科学的に測定するだけでなく,生態学的,政治的,経済的,社会的,美的などいろいろな角度から評価できるカを育てる」というものである(なお,この目標「評価能力」はトビリシ勧告では他の目標に含まれるかたちで消えている)。
全体としては「気づく」「知る」「行動する」という段階にまとめることができよう。多くの場合,「気づく」「知る」まではいくのだが,なかなか「行動する」へ進まない。環境問題が他人事である限り,そうした状況が続く。それをどう自分の問題として「意識づけ」「認識させ」「行動する」ようにさせるか。現在,環境教育にとって大きな課題の一つである。