human and environment
3-2.学習の方法と学習環境の整備
- 環境教育とは -  鈴木 善次

A. 体験学習の重視
 イギリスでは環境教育を「環境について(about)の学習」「環境のため(for)の学習」「環境の中で(in)の学習」という3つのカテゴリーに分けることがなされる。最近ではこれに加えて「環境を通して(through)の学習」とか「環境とともに(with)学習」などを加える人もいるが,基本的には初めの3つに収めることができよう。

 このうち、「環境についての学習」は、すでに「学習対象と学習内容」で述べたことであり、ここでの環境は自然環境,人為環境の両方を指しているし,両者を総合すると文化や文明についての学習にもなる。学校では理科や社会などの教科が中心になる部分であろう。

 次の「環境のための学習」は「環境問題についての知識」「環境を保全するための知識や技能,能力,態度,実行力」などが含まれることになる。かつての公害教育や自然保護教育はこのカテゴリーの活動であろう。個別的な活動としては空き缶や牛乳パックなどの回収,いわゆるリサイクル活動が含まれよう。学校では特別活動,児童会や生徒会の活動,ときにはクラブ活動が当てはまる。

 最後の「環境の中での学習」は自然観察会やタウン・ウォッチングなど実際,学習対象となる環境の中での体験的な活動を指している。これは環境教育の目的や目標の初めに示されている環境への「関心」,さらには環境への感性を獲得する上においても大切な活動であるが,なによりも学習者をして環境問題に「本気で」取り組んでもらうためにも欠くことのできない方法である。いくら本を読んで多くの知識をもったとしても,実際の場面を見ないと感じとれない部分はあるものである。「環境について」「環境のため」の学習を深めるためにも「環境の中での」学習、いわゆる体験学習が求められるのである。



B. 学習環境の整備
 体験学習が重視されるとなると本や文献など間接的な環境学習でなく、実際に自然環境なり人為環境なりに触れる機会とその場が必要になる。アメリカなどでは自然環境を学習する場として各地に「環境学習センター」などという施設が置かれている。また、人為環境の学習を重視しているイギリスでは街の中にそのような施設があるという。それらには学校からばかりでなく、家族や社会の任意的なグループからの訪問者が訪れて学習を行うことが出来るようになっている。最近、わが国でもいくつかの自治体に「環境学習センター」的な施設が造られ、市民に学習の場を提供している。

 ところで、最近、学校ビオトープなるものを作る動きが各地で見られているが、これは自然環境学習の一つの場としての意義を持つものと言えよう。もともとビオトープは生き物の暮らす空間という意味のドイツ語(BIOTOP)である。都市化が進むドイツを中心にしてヨーロッパなどで都会にも野生の生物が生活できる場(ビオトープ)をつくろうという運動が展開されるようになり、実際に大きなビオトープが各地の街の中に造られ、さまざまな生物によって再現された「自然」が訪れる人々を楽しませているという。わが国でもそうした動きに刺激されて街造りの際にビオトープ的な空間を確保すべきという考えも見られつつあるが、まだ、ヨーロッパの状況にはほど遠い。

 そうした状況において子どもたちが少しでも「自然」と触れ合う機会をもち、自分達と自然とのつき合い方を学んでもらうためにも学校の敷地内にビオトープを造ることは環境教育の立場から大きな意味があると言えよう。その際、出来るだけ子どもたちがビオトープ造りに参加することである。自分達の造ったビオトープ。そこで暮らす生き物たち。そうした意識があるかないかで学習効果は大きく違ってくるであろう。




ビオトープ(大阪府高槻市)