競争地位別戦略

ビール業界の競争地位と競争戦略

 ビール業界においてのリーダー企業は、最近その地位がいささか怪しくなっていますが、キリンビールと考えてよいでしょう。売上高や営業利益で、アサヒビールの激しい追い上げを受けていますが、かつてガリバーであった時の経営資源、特に財務資源の蓄積を持っており、利益額ではアサヒを圧倒しています。キリンビールの競争戦略は、ラガーや一番絞り、淡麗といった多くのブランドによる全方位型の事業展開です。最近、好評を博している発泡酒の淡麗は、同質化戦略の典型的な成功例といえます。そもそもサントリーやサッポロが先に参入した商品で、キリンは2番手に参入し、みごとに最大シェアの獲得に成功しています。

 対して、アサヒビールは典型的なチャレンジャー企業と考えられるでしょう。アサヒビールの戦略はスーパードライという差別化に成功したブランドを持ち、瓶入りタイプの発売や鮮度を保つための流通革新といった差別化を維持する数々の戦略をとることでキリンビールを猛追しています。

 後のサントリーとサッポロビールの戦略はあまりはっきりしませんが、サントリーはモルツビールと発泡酒に特化して両セグメントの制圧を目指し、業界のニッチャーたることを狙う会社であるとも考えられるでしょう。サッポロビールは、サッポロビン生やエビスビールといった優良なブランドを抱えていますが、他の企業と比べて戦略にこれといった特色のない、フォロワー的な企業といえるかもしれません。