企業の経済学 |
企業側は、市場価格と生産費用を比較して、利潤が最大になるように生産量を決定します。価格が低い時には、販売収入も小さく、低いコストで生産するため、生産量は小さくなります。価格が高い時は、高いコストをかけて大きな生産ができます。このため、価格と供給量の関係を示す供給曲線は右上がりになり、企業が合理的に行動するなら、この曲線上で販売することになります。 |
同じ財を取引する家計と企業が出合う市場で、取引は、需要曲線を集計した市場需要曲線と供給曲線を集計した市場供給曲線の交点で行われます。この交点が家計と企業の両方が最適な行動となる点です。 ここで、市場の取引価格と取引数量が決定されます。 |
消費者の選り好みの変化は需要曲線を変化させ、一企業の技術進歩などは供給曲線を変化させます。 この変化によって、市場価格は大きく変動しますが、市場で供給過剰になれば価格が低下し、需要の増加で品不足が生じる場合は価格が上昇して、市場の需要と供給が調整されるようになっています。価格には需給関係を調整する自動調整作用があり、価格機構と呼ばれ、社会全体の複雑な資源の配分を最適にします。 |
価格機構が機能するには、自由な競争が行われ、参入が自由であるなどの市場の条件が必要です。しかし、現実の経済社会では、市場の失敗と呼ばれる現象があります。 例えば、独占や寡占が存在する場合では、市場で財が十分に生産されず、価格が高くなり、消費者に不利な状況が発生します。また、道路や下水道などの公共財は、コストの負担に関係なく、すべての人が同量の消費が可能な財であるため、通常のメカニズムのように最適な資源配分が保証されません。 市場を通らないで他の経済主体に利益を与えたり(=外部経済)、公害のように不利益をもたらしたり(=外部不経済)する場合もあります。外部経済が存在すれば、社会的に財の供給が不十分になり、また、外部不経済が存在する場合には財の供給が過剰になります。 市場に任せておく場合の限界であり、政府の役割が重要になります。 |
(大塚 晴之) |