財務諸表論 |
キャッシュ・フロー計算書は、文字どおり企業資金の流れ(フロー)、つまり資金の調達源泉や使途を明らかにする一覧表です。 企業が円滑に活動していくには、企業の業種や業態、規模に応じた一定量の資金(=運転資金)が必要で、この運転資金が不足ないし枯渇してしまうと、企業は当座の資金繰りが難しくなり、悪くすると利益を出していながらも倒産してしまうようなことになりかねません。このように資金の状況(=財務状況)は企業の存続可能性を左右するきわめて重要な要因なのです。アメリカでは以前から企業の財務状況を明らかにする一覧表の作成や開示に関する研究が進められ、今日、その公表が法的にも義務づけられています。ただ、ひとくちに財務状況を明らかにするといっても、何を資金として認識し、どのような方法で開示するのか、といったいくつかの難しい問題が存在します。事実、アメリカでもこれらの点に関してかなり精力的な研究が進められ、激しい議論も展開されました。 現在、キャッシュ・フロー計算書と呼ばれているものは、こうした研究の成果をもとにして、アメリカ財務会計基準審議会(FASB)が1987年にそれまでの財政状態変動表に替えて作成を義務づけた、新しい様式の資金計算書です。 キャッシュ・フロー計算書では、現金と現金等価物だけを資金として認識します。また、企業活動を営業活動、投資活動、資金調達活動の3つに区分し、各活動区分ごとに1期間の現金収支額をそれぞれ種類別に表示して、正味現金調達額を明らかにします。そして、これらを合計して企業全体の現金の純増減額を示すと同時に、その期末残高を表示します。 わが国でも、企業会計原則の改正によって、新たに連結ベースでキャッシュ・フロー計算書を作成することが、上場会社など一部の企業に対して義務づけられました。 |
(伊豫田 隆俊) |