コーポレート・ガバナンス 証券論

 企業をどのように統治するかという問題が、コーポレート・ガバナンスの問題です。企業の経営者と企業の所有者である株主の間には、投資プロジェクトの実施について情報の非対称性が存在します。簡単に言うと、株主の知らないうちに、経営者が自分自身の利益をあげてしまうだけでなく、株主の利益を損ねる可能性があるということです。

 一般に経営者の行動を牽制するシステムが、株主の選出による取締役会ですが、これが株主意思を反映した形で企業をコントロールできていないところに問題があります。特にこれまでの日本では、メインバンクの発言権が強く、投資決定において株主の利益が重視されない傾向がありました。また、株主も企業統治に積極的ではありませんでした。ここで、企業が効率的に運営されないという問題が発生するわけです。もし、非効率的なシステムならば、収益率は最適性と一貫性がなくなり、マクロ的にも経済厚生を損ねることになります。これまでは、日本型のシステムは効率的だと評価されてきました。しかし、国際化が進み、メインバンク制そのものが崩壊していく今、どのようなコーポレート・ガバナンスをすれば良いかが改めて問われています。

(大塚 晴之)