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5-1-11 集める、組み合わせる
Example 「過疎」村落研究―資料の組み合わせ、視点の転換

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「過疎」村落研究―資料の組み合わせ、視点の転換
 1990年代半ば、「過疎村落研究会」に参加して石川県の白山麓にあるC集落で調査をしたときのことです。この集落は世帯数、人口が減少しているにもかかわらず、現地調査のなかでは住民が強い危機感をいだいている、という印象を受けませんでした。過疎化「問題」を探しだそうとする筆者にたいして、「『過疎』とは行政が使用している言葉だ」とある住民は述べました。私にはその意味がよく理解できませんでした。
 ある時、1960年代末に廃校となったC小学校の「卒業者名簿」を見せてもらいました。この数百名の集落出身者たちは、現在、どこに住んでいるのだろうか。1人1人の現居住地域をC集落住民に尋ね、その分布を地図と照合させました。すると、興味深いことが分かりました。C小学校卒業生の約8割がC集落とは車で1時間前後で往来でき、かつ、その多くが金沢市への通勤圏内に暮らしています。さらに住民へのインタビューを重ねるうちに、C集落の現住民と他地に転出した元住民とが互いを訪問し合い、日常的にもつながりがあることがわかってきました。調査者である私は、集落という単位にのみ焦点をあてC集落を過疎村落として注目してきました。しかし、住民とっては、集落外部に住む元住民や家族との密接なつながりのなかで、より広い生活空間が形成されていたのです。
 調査の現場では、さまざまな資料に出会います。それらの1つ1つは調査を展開するヒントを含んでいます。観たり、聴いたり、集めたり、複数の情報源を組み合わせることによって、調査は創造的に展開してゆきます。

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