社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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5-2-4 歩いて資料探索
歩いて資料探索・詳細

1.グローブ・ネイバーフッド・センターが保管しているドキュメントの整理/「開かずのキャビネット」
 1973年にグローブ・ネイバーフッド・センターが設立されてからの古いドキュメントは、オフィスのキャビネットに保管されていた。書類は全部、何を見てもよいと許可されたが、何を見ればよいかについてのアドバイスはない。実は、そこに何があるのか、正確に知る人はいなかった。センターは、1994年に2階建てに増築され現在の建物となった。その後10年間の書類は、別のキャビネットにきちんと整理されているが、それ以前の古い資料は顧みられず放置されたままになっていた。センター2階のホールを借りて、古い資料の全てを広げてみる。1970年代からの議事録、ニューズレター、イベントの宣伝、写真、補助金申請書類、報告書などなど、さまざまな資料がある。これらを何日間かかけて分類した。文字記録はおおまかには3種類あった。第1にセンターが住民に向けて発信した広報、第2にセンターの組織運営に関する書類、第3にグローブ・ネイバーフッド・センターについてとりあげた雑誌記事など。このほかに、束ねた、あるいはアルバムに入ったスナップ写真類もある。ドキュメントの内容を読む時間はないが、これらを直接に1つ1つ手で触れるだけも、これまでのセンターの大きな流れを体感でき、また分類をして整理しておけば今後、資料をとりだしやすくなる。
ポスター
ポスター 拡大画像
ニューズレター
ニューズレター 拡大画像
2.ハマースミス図書館へ/地図を片手に
 グローブ・ネイバーフッド・センター以外の地域の諸機関でも、これから調査をすすめてゆくうえでの手がかりを探してみることにした。まずはハマースミス&フラム自治体が運営しているハマースミス図書館へ。1990年代以降の比較的新しい行政資料はあるが、それ以前の郷土資料なるものを系統だてて収集しているわけではないようだ。自治区全体の道路や末端の行政区画(Ward)の境界などを記した60×80センチサイズの自治体発行の地図を図書館内で発見した。無料、自由に待ち帰ってよい。自治区全体を見渡すことができ調査には重宝する。
 後日、この地図を片手にグローブ区の境界を一周してみる。友人Vにカメラマン役をお願いし、私は地図をみて歩き続けた。1時間以上かかる。区という単位は予想以上に広い。グローブのコミュニティ・センターとはいっても、実際にはグローブ・ネイバーフッド・センターの存在を知らない区内の住民も多いのではないか。センターの名前となっている「グローブ」にどれほどの意味があるのだろうか。このコミュニティ・センターが対象とするローカル・コミュニティとは何だろうか。グローブ区を自分で実際に歩いてみることによって、こうした疑問がはじめて実感として浮かんでくる。
 図書館では地図のほかに、ハマースミス&フラム公文書・郷土史センターのポスターを見つけ、パンフレットをもらった。
3.ハマースミス&フラム公文書・郷土史センターへ/グローブ・ネイバーフッド・センターの写真がこんなところに!
 ハマースミス図書館を訪問してから数日後、ハマースミス&フラム公文書・郷土史センター(Hammersmith&Fulham Archive and Local History Centre)に電話した。誰でも公文書・郷土史センターを利用することができるが、訪問者は予約をしなければならない。館内ではスタッフが利用者の目的に応じて専門的な相談にのってくれる。グローブ・ネイバーフッド・センターに関心があると説明する。「それならこのファイルは見たことがある?」といって1人のスタッフが、センターがあるブラドモア・パーク通りのファイルを出してくれた。この公文書・郷土史センターでは、ハマースミス&フラム自治区内の一つ一つの道路別にファイルをつくり写真を保存している。このファイルには、1940年代以降のこの通りの写真が入っていた。1940年、空襲を受けて破壊された住居、その被災地跡に作られたプレハブの住居の70年代の写真、80年代1階建てだったグローブ・ネイバーフッド・センター、90年代の増築など、センターの建物の変化を映像でたどることができる。グローブ・ネイバーフッド・センターの見知らぬ過去が身近に具体的に感じられる。
 翌年2003年8月には再度この公文書・郷土史センターを訪れ、グローブ・ネイバーフッド・センターの写真やハマースミスの写真を、甲南大学社会学科の社会調査法についてのホームページのなかで使いたいと相談した。公文書・郷土史センターでは教育上の目的であればWebに掲載してもよいと、快く書類上の手続きをすすめてくれた。こうした写真は、グローブ・ネイバーフッド・センターや地域の変化をイメージするのに役立つだけでなく、ハマースミスでの取材の際にこれらの写真を相手にみせると話を始めるきっかけにもなる。

 写真のほかにも、ハマースミス&フラム公文書・郷土史センターが発行している資料のうちハマースミスに関する文献、地図、写真、パンフレットをできる限り購入する。もともとの発行部数が限られているので、すぐに絶版になりその後は入手が難しくなる。1,2年前に出版された本もすでに絶版である。公文書・郷土史センターのスタッフが、絶版になった本はひょっとしたらハマースミスにあるディスカウントの本屋にあるかもしれないと場所を教えてくれた。統計などの行政資料については、タウン・ホール4階の調査・環境局(Enquiries-Environment Department)にあるという。公文書・郷土史センターを出たその足で教えてもらったディスカウントの本屋へ行ってみる。『20世紀のハマースミスとフラム』という写真集を定価の半値で購入する。グローブ・ネイバーフッド・センターでのアフタヌーン・ティーにこの写真集とセンターの建物の古い写真をもってゆくと、高齢の参加者たちがこれらに多大な関心を寄せ、いっせいに思い出を語り始めた。
4.ハマースミス・タウン・ホール
 翌日タウン・ホールの調査・環境局を訪ねた。最新の統計、センサスの分析や調査報告書などをまとめて購入した。1990年代以前の古い資料はタウン・ホール内の組織変革が行われるたびに処分されてしまったようだ。

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