社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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6-1-6 資料探索の事例
大宅文庫で、雑誌の記事や広告を系統的に調べる。

 2002年度卒業生のNAさんは、日本の化粧品や食品の広告が、そのデザインやキャッチコピーに関して、どのように変わってきたかを考察したいと考えた。そのために昔の広告を調べなければならない。そこで彼女が取り上げたのは雑誌に載せられた宣伝である。本なら近くの図書館になかったとしても、国会図書館(東京都千代田区の本館だけでなく、京都精華町の関西館も利用できる)に行けば、全部そろっている。出版された書籍はすべて、一冊は国会図書館に寄贈することになっているからである。しかし雑誌はそうはいかない。昔の雑誌はどこで、どうやって調べたらいいか。それが東京都世田谷区八幡山にある大宅文庫なのである。1970年に死去したジャーナリスト大宅壮一が生前に創設した大宅資料室(雑草文庫)が元になって、71年に設立された日本唯一の雑誌図書館である大宅文庫には、彼が所蔵していた雑誌雑本20万冊をもとに、書籍約7万冊、日本の古今の雑誌約1万種類、60万冊の蔵書数をほこっている。大宅文庫のパンフレットによると「明治時代から現在まで1万種類の雑誌を所蔵。現在刊行されている雑誌では、週刊誌、女性誌、総合月刊誌を中心におよそ1000種類のバックナンバーを所蔵しています。毎年2万冊ずつ増えます。また、およそ5000冊の創刊号も所蔵、明治時代から現在までの雑誌の歩みを振り返ることができます」という。
 なお、その雑誌については、どんな記事がどの雑誌の何頁にでているかを文庫のスタッフが調べ上げて制作した膨大な索引集が毎年発行されている。これは便利である。たとえば、日系ハワイ移民について調べたければ、移民やハワイという項目で、索引集を調べれば、およそどのような記事がいつ発行の何という雑誌にでていたかが分かるのである。それで見当をつけておいて、大宅文庫に行き、実際に実物に当たればよい。この索引集も社会学科共同図書室にあるので、学生諸君には大いに利用して欲しい。
 ただし注意して欲しいのは、利用が有料だということである。雑誌を集めるのにお金がかかることに加え、索引を作るのには膨大な人件費がかかるのだから当然のことである。入館料が500円。コピーを頼めば、モノクロで1枚につき100円である。見るだけならお金はいらない。学生諸君はこれを高いと感じるかもしれない。しかし、他にない情報を得るには対価が必要なのである。タダで質のいい情報を入手することはなかなか難しい。今後どれくらい利用するかにもよるが、会員制度もあるし、学生割引もあるので、工夫して賢く利用すればよいと思う。
 さてNさんは、1906(明治39)年創刊の「婦人世界」(明治39年1月号〜昭和4年5月号)、および1917(大正6)年創刊の「主婦の友」(昭和3年〜同62年)を材料とし、広告、特に化粧品を中心として、その数や文面を分析した。とりわけ「主婦の友」からは大戦後、外国の文化も積極的に取り入れている様子がその中の化粧品広告を見ても、良く分かった、というのである。詳しい構成展開と結論については、授業で余裕があれば、紹介したい。


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