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原価計算 長坂悦敬
第2章 原価概念:目的によって原価の内容が異なる

2-3  特殊原価調査上での原価概念

原価制度から離れて、経営計画に対して使用する原価の諸概念を特殊原価概念という。特殊原価調査は、計算目的に特殊性をもち、臨時的に行われ、経営計画と関連性をもっている。

機会原価(opportunity cost)

資源の他の代替的用途を放棄することによって断念される利益を測定したもの
経営計画において代替的なA案とB案がある。

  • A案:1000万円の利益が得られる
  • B案:900万円の利益が得られる

A案を採択すればB案は棄却される。B案の900万円の利益は放棄されることになるので、これは機会原価である。機会原価は受注の可否、投資の是非を判断するもとになる。

付加原価(imputed cost)

現金の支出を伴わないが、それらに関わるプロジェクトの採算性の計算には勘案しなければならない原価。 自己資本利子、自己所有資産の賃借料、企業家賃金など。
意思決定に際しての付加原価は、機会原価としての意義ももつ。

埋没原価(sunk cost)

稼働中の資産を新しいものに取り替えるとき、その資産の未償却部分があればそれが埋没原価となる。・・・一定の状況のもとでは、回収しえない歴史的原価。現在の意思決定には関係しない。

回避可能原価(discretionary cost)

ある生産ラインを継続するか、中止するかの意思決定を迫られたとき、当該生産ラインを継続すれば発生し、中止すれば発生しない原価・・・つまり、回避できる原価を回避可能原価という。

延期可能原価(postponable cost)

現在投入しなければ経営に支障をきたすという原価ではなく、将来に延期することのできる原価。
工場の緑化施設の原価、工程改善費や機械保全費の一部など。

現金支出原価(out-of-pocket cost)

マネジメントの意思決定に基づいて、ただちにまたは近い将来に、現金支出をもたらす原価。
設備の取替投資をする場合、新設備価格から旧設備の処分価格を控除した正味投資額(つまり正味現金支出額)は現金支出原価である。これは投資額としても用いられる。

差額原価(differential cost)

経営活動の変化に伴って生じる原価総額、あるいは特定原価要素の増減分をいう。
例えば、生産量や販売量など操業度の変化によって生じる原価の差額。
生産量 総原価 差額原価
1000 12000 -
1100 14000 200
1200 16500 2500
1300 19500 3000
経営意思決定に適切に利用できる原価概念は未来の差額原価である。

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