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原価計算 長坂悦敬
第3章 原価計算の基礎的手続き

3-3  原価の3大要素(形態別分類)

原価 = 材料費 + 労務費 + 経費

  • 材料費:材料、工具、治具、部品など
  • 製造にかかわった人の給料や賃金、工場の管理人、警備員、工場の寮や社宅の管理人の給料
  • 経費:材料費と労務費以外のものすべての原価をさす。
    電気代、水道代、ガス代、減価償却費、出張旅費、交通費、保険料、修繕費、賃借料、厚生費

分類の違いが会社によって存在する

  • 材料の保管費 = 材料費? 経費?
  • 機械の動力係の給料 = 労務費? 経費(動力費)?
    (しかし、どこでも、動力用の燃料 = 経費)

特定の製品と関係が明確かどうかという観点で分類すると製造直接費(直接費)と製造間接費(間接費)に分けられる。

製造直接費:特定の製品の製造のために消費されたことを直接認識することができ、その製品に直接集計(賦課)することができる原価

製造間接費:各製品の製造に共通的に消費され、特定製品との関連が明確でないために、特定製品に直接集計することができない原価

直接材料費 = 主要材料費(原料費)、買入部品費
間接材料費 = 補助材料費、工具消耗品費

直接労務費 = 直接賃金
間接労務費 = 間接作業賃金、休業賃金

直接経費 = 設計料、特許権使用料、検査料
間接経費 = 交際や接待費、厚生費、旅費

1.材料費

製品の素材となるもの、製品を製造するために買い入れたもの(部品や工具など)

  • 素材費(または原料費)
    家具製造業:木材、プラスチック製品製造業:石油
  • 買入部品費
    購入後にほとんど加工することなく製品に取り付ける部品などを買う費用
    ボルト、ナット、ビスなども含まれる。
  • 燃料費
    燃料に要した費用。
  • 工場消耗品費
    グリース、塗料、機械油、薬品、作業用手袋、石鹸など。
  • 消耗工具器具備品費
    ドリル、カッター、ペンチ、スパナ、定規、測定工具など
    (購入価格20万円未満、あるいは耐用年数1年未満のもの)
    (この条件を超えるものは、経理の上では資産と見なされ、原価消極費として規則的に費用化される)

2.労務費

労務費は、製造工場で働く人たちの人件費を指す。(本社の事務員、営業所の営業マンの人件費は労務費とはされない)

  • 賃金
  • 給料
  • 雑給
  • 従業員賞与手当
  • 賞与引当金繰入額
  • 退職金
  • 退職金給与引当繰入額
  • 法定福利費
  • 賃金:工場という現場で働いている工員に支払われるお金。支払い方法に時間給、日給、月給、出来高給などがある。
  • 給料:同じ工場内でも事務に携わっている人に支払われるお金。工場長、課長、係長、技師、監督、事務職員、研究要員などに支払われる。
  • 雑給:パートタイマー、臨時工に支払われるお金。運搬、清掃などに従事する社外作業員らの費用。
  • 従業員賞与手当:ボーナス、家族手当、通勤手当、精勤手当
  • 退職金給与引当繰入額:退職した際に支払われる退職金に備えて、毎月積み立てしている費用
  • 法定福利費:健康保険、厚生年金、雇用保険、労働者災害補償保険にかかる企業負担費用

3.経費

計算方法において、4種類に分類できる。

(1)支払経費

外注加工費、修繕費、福利厚生費、運賃、保管料、通信費、旅費、交通費
  ↑
仕入れの際の引き取り運賃
会社内部で修繕したのではなく、外部に依頼して修繕してもらった際に支払われた費用

(2)測定経費(メーターや計器で消費量を測定できる経費)

電力料金、ガス料金、水道料金

(3)月割経費(毎月支払う賃借料、リース料金など)

火災保険料などの損害保険料、賃借料、固定資産税などの租税公課、減価償却費
  ↑
保険料、租税公課などは1年分を一度に支払うが、原価計算上は月割りにして消費額を計算する。
特許権使用料も月割経費に含まれる。

(4)発生経費

棚卸消耗費
  ↑
保管してあった材料などを棚卸ししてみると、破損、変質していた場合に発生する損失金のこと。

販売費及び一般管理費

工場や製造部門以外のところで、製品を売るのにかかった費用を営業費(もしくは販売費及び一般管理費と呼ぶ)

含まれるもの

営業する際に使われる費用(営業マンの給料、広告宣伝費、販売部門における管理費)
= 製品の販売とその代金回収という一貫した営業活動中に発生するすべての費用

  • 役員報酬(利益処分による役員賞与は含まれない)
  • 給料(役員報酬を含む場合もある)
  • 福利厚生費
  • 旅費・交通費
  • 通信費
  • 交際費(祝儀、香典、歳暮などの贈答品までをも含む)
  • 宣伝広告費
  • 賃借料
  • 支払手数料
  • 運賃(材料仕入れの取引運賃は製造原価に含まれる)
  • 消耗品費
  • 修繕費
  • 租税公課(事業税、固定資産税、収入印紙代まで含まれるが、法人事業税、法人住民税は含まれない)
  • 車両費
  • 減価償却費
  • 教育訓練費
  • 販売管理費
  • 倉庫費
  • 売掛金回収費
  • 研究開発費
  • 雑費

営業費と製造原価を区別する

営業費の費用の名称は、製造原価で使われるものとかなりだぶっている。

例えば、「給料」。
  • 工場で働いている技師に支払われるもの?
  • 営業所に勤務している販売員に支払われるもの?

区分がはっきりしているので、営業費に含まれるか、製造原価に含まれるか明確である。

取引先と商談したり、接待するとき、営業部長と工場長が同席していたら?

区分があいまいになる・・・そういう場合でも、商談や接待の目的や主導権によって、製造原価になるのか、営業費になるのか明確にしておく必要がある。

輸送運賃や発送費は?

工場に搬入したものか、それとも工場から搬出したものかで 製造原価に含まれるか、営業費に含まれるかが決まる。つまり、製造に必要な材料などを工場に搬入する際の引取運賃は製造原価に含まれる。また、工場あるいは倉庫、物流センターなどから発送・輸送される際の運賃は、営業費に含まれる。(製品になったものを扱う = 営業活動)

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