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原価計算 | 長坂悦敬 |
第5章 費目別計算
5-1 費目別計算 |
材料費(material costs)は、製造原価のうち「物品の消費によって発生する原価」であり、材料消費量に消費単価を乗じて求める。
材料とは、製品の素材となるもの、ならびに製品を製造するために買い入れた物品(部品や工具など)であり、材料の消費によって生ずる原価を材料費と呼ぶ。形態別分類によると材料費は概ね次のように細分される。
また、材料費は、製品との関連において、その発生が直接的に認識できる直接材料費と、直接には認識できない間接材料費に分類できる。素材費と買入部品費は直接材料費であり、燃料費、工場消耗品費および消耗工具器具備品費は一般に間接材料費となる。
材料を購入したとき、その購入原価を材料勘定の借方に記入する。材料の購入原価は材料主費(購入代価)と材料副費からなる。材料副費には購入手数料や引取り運賃等の外部材料副費(材料引取費用)と購入事務費、保管料、運搬費用等の内部材料副費(材料取扱費用)がある。但し、内部材料副費については全部または一部を購入原価に算入しないことが許容されている。
(借方)材料 ×××|(貸方)買掛金(等) ×××
材料を消費した場合、その消費高は特定の製品に跡づけできる直接材料費と特定の製品に跡づけできない間接材料費に分類する。したがって、材料勘定から直接材料費を仕掛品勘定に、また、間接材料費を製造間接費勘定に振り替える。
(借方)仕掛品 ××× |(貸方)材料 ×××
(借方)製造間接費 ×××
図表5-1 材料消費時の勘定連絡図
材料の消費高は次の式によって計算する。
材料の消費高 = 消費単価 × 消費数量
材料消費数量の計算法は、材料の入出庫記録をその都度行うかどうかで継続記録法(perpetual inventory method)、棚卸計算法(periodic inventory method)および逆計算法(retrograde inventory method)の3つに分かれる。原則として継続記録法で計算すべきであるが、消費量を継続記録法によって計算することが困難なもの、またはその必要のないものは棚卸計算法を適用する。逆計算法は、棚卸計算法と併用して、あるいは簡便法として用いられる。
入出庫の都度記録を行い、記録された払出数量をもって消費数量とする方法である。材料種類別に入出庫を的確に示す伝票を必要とする。
材料の消費数量=材料元帳で記録された払出数量
月末(原価計算期末)に実施棚卸を行い、月初棚卸数量と当月購入数量の合計から月末実地棚卸数量を差し引いた数量を払い出したものとみなして消費数量とする方法である。
材料の消費数量 = 月初棚卸数量 + 当月購入数量 - 月末実地棚卸数量
この方法は計算の手間がかからないという長所はあるが、製品別にどれだけの数量を消費したかがわからないという欠点がある。特定製品に跡づけしなければならない材料(直接材料費となるもの)や金額的に重要性が高い材料は継続記録法で消費数量を計算し、それ以外の重要性の低い材料に棚卸計算法を適用する。
製品1個あたりの材料消費量が事前に決定されているとき、完成した製品数量から材料消費量を逆算する便宜的な方法である。
材料の消費数量 = 当期製品生産量×単位当たり予定材料消費量
材料の消費単価は、購入原価から導く次式で求める。しかし、実際購入単価に代えて「予定価格」使用することや、他工場からの振替製品を受け入れる場合のように「正常市価」を使用することもある。
消費単価 = 原則として実際の購入単価 = 購入原価 ÷ 購入数量
材料の消費単価は、原則として材料の購入原価から算出するが、購入単価は購入先や購入時期の違いによって同じとは限らない。消費価格の決定法に以下の方法がある。
最も先に購入した材料から順次払い出されたと仮定して消費単価を求める方法である。
材料を購入する都度、それまでの残高と合算して平均単価を計算し直し、払い出し時の平均単価を消費単価に用いる方法である。
一定期間をとって期首有高と当期購入高の合計額をその材料の合計数量で除して平均単価とし、これを期間中に払い出したすべての材料の消費単価とする方法である。
最も新しく購入し材料から先に払い出したと仮定して消費単価を求める方法である。
次の資料にもとづいて、(1)先入先出法、(2)移動平均法、(3)後入先出法の各方法によって材料元帳を作成しなさい。
10月 1日 | 残高 | 100個 | 単価 | 100円 |
10月 5日 | 払出 | 25個 | ||
10月15日 | 受入 | 400個 | 単価 | 110円 |
10月20日 | 払出 | 150個 |
月日 | 摘要 | 受入 | 排出 | 残高 | ||||||
数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | ||
10 1 | 前月繰越 | 100 | 100 | 10,000 | 100 | 100 | 10,000 | |||
5 | 払出 | 25 | 100 | 2,500 | 75 | 100 | 7,500 | |||
15 | 受入 | 400 | 110 | 44,000 | 400 | 110 | 44,000 | |||
20 | 払出 | 75 | 100 | 7,500 | ||||||
75 | 100 | 8,250 | 325 | 100 | 35,750 | |||||
31 | 次月繰越 | 325 | 110 | 35,750 | ||||||
500 | 54,000 | 500 | 54,000 | |||||||
11 1 | 前月繰越 | 325 | 100 | 35,750 | 325 | 110 | 35,750 |
月日 | 摘要 | 受入 | 排出 | 残高 | ||||||
数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | ||
10 1 | 前月繰越 | 100 | 100 | 10,000 | 100 | 100 | 10,000 | |||
5 | 払出 | 25 | 100 | 2,500 | 75 | 100 | 7,500 | |||
15 | 受入 | 400 | 110 | 44,000 | 475 | 10,842 | 51,500 | |||
20 | 払出 | 150 | 10,842 | 16,263 | 325 | 10,842 | 35,237 | |||
31 | 次月繰越 | 325 | 10,842 | 35,237 | ||||||
500 | 54,000 | 500 | 54,000 | |||||||
11 1 | 前月繰越 | 325 | 10,842 | 35,237 | 325 | 10,842 | 35,237 |
月日 | 摘要 | 受入 | 排出 | 残高 | ||||||
数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | ||
10 1 | 前月繰越 | 100 | 100 | 10,000 | 100 | 100 | 10,000 | |||
5 | 払出 | 25 | 100 | 2,500 | 75 | 100 | 7,500 | |||
15 | 受入 | 400 | 110 | 44,000 | 400 | 110 | 44,000 | |||
20 | 払出 | 150 | 110 | 16,500 | 75 | 100 | 7,500 | |||
250 | 110 | 27,500 | ||||||||
31 | 次月繰越 | 75 | 100 | 7,500 | ||||||
250 | 110 | 27,500 | ||||||||
500 | 54,000 | 500 | 54,000 | |||||||
11 1 | 前月繰越 | 75 | 100 | 7,500 | 75 | 100 | 7,500 | |||
250 | 110 | 27,500 | 250 | 110 | 27,500 |
材料の消費量を継続記録法で計算している場合、期末棚卸数量を材料元帳(material ledger)で把握できる。しかし、この帳簿数量は実在する数量と常に一致するとは限らない。実地棚卸による実際数量と帳簿数量が異なる場合、次式のように、不足量に単位原価を乗じた額を棚卸減耗費(inventory shortage)として処理し、材料元帳の帳簿残高を実際有高に修正することになる。
棚卸減耗費 = 材料1個あたりの原価 ×(帳簿棚卸数量 - 実地棚卸数量)
棚卸減耗費の処理は、通常発生する程度(正常発生)である場合には間接経費として処理する。
(借方)棚卸減耗費 ××× | (貸方)材料 ×××
(借方)製造間接費 ××× | (貸方)棚卸減耗費 ×××
(借方)製造間接費 ××× | (貸方)材料 ×××
また、異常に、あるいは通常発生する程度を超えて発生した棚卸減耗費は製造原価に含めず、非原価項目(損益計算書の営業外費用あるいは特別損失)として処理する。
(借方)棚卸減耗費 ××× | (貸方)材料 ×××
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