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原価計算 長坂悦敬
第8章 個別原価計算

8-7  作業屑の計算と処理

作業屑(scrap,waste)とは、製品の製造途中で発生する原材料の残り屑のうち、売却価値または利用価値のあるものを指す。作業屑は一種の資産であるゆえ、それが発生した場合、作業屑の評価額を計算する。評価額の計算方法は、売却するか自家消費するか、加工が必要か不要かによって、図表8-9のように分かれる。

図表8-9 作業屑の評価額の計算
  加工が不要 加工が必要
売却する場合 (1) 見積売却価額−見積販売費及び
一般管理費(−正常利益)
(加工を行って売却できる場合)
(2) (1)の金額−見積加工費
(加工を行って売却できる場合)
自家消費する場合 (3) 見積購入価額
(そのまま材料などとして自家消費する場合)
(4) (3)の金額−見積加工費
(加工を行って材料などとして自家消費する場合)

作業屑は、製品の実体を構成するに至らなかった材料であるから、仕掛品勘定あるいは部門費勘定から作業屑勘定に振り替え処理する。なお、作業屑が特定の製品の加工から発生する場合と、各製品の加工作業から共通的に発生する場合とでは処理が異なる。具体的には、図表8-9の方法で計算した評価額を、前者の場合は製造指図書の製造原価から控除する。また、後者の場合は、製造間接費ないし発生部門の部門費から控除する。但し、作業屑の価値が僅少な場合は、売却した時または自家消費した時に売上収益または利用価値価額見積額を雑収入として処理する。

(1)特定の製品(指図書No.1)から発生する場(No.1の製造原価から控除)

(借方)作業屑 ××× | (貸方)仕掛品(No.1) ×××

(2)各製品の加工作業から共通的に発生する場合

1.単純個別原価計算の場合(製造間接費から控除)

(借方) 作業屑 ××× | (貸方) 製造間接費 ×××

2.部門別個別原価計算の場合(発生した製造部門の部門費から控除)

(借方) 作業屑 ××× | (貸方) A製造部門費 ×××

(3)作業屑の発生額がわずかな場合(評価額を計上せず、売却額を雑収入勘定で処理)

(借方) 作業屑 ××× | (貸方) 雑収入 ×××

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