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原価計算 | 杉山善浩 |
第9章 総合原価計算
9-1 単純総合原価計算 |
総合原価計算(process costing)とは、同じ規格の製品を大量に生産する生産形態に適用される原価計算である。総合原価計算のうち、1種類のみの製品を大量に生産する企業で用いられる原価計算を単純総合原価計算(single process costing)という(原価計算基準21)。ここでは、単純総合原価計算の計算方法について説明する。
総合原価計算において、完成品原価(完成品総合原価ともいう)は、つぎの式で計算する。
完成品原価 = 月初仕掛品原価 + 当月製造費用 - 月末仕掛品原価
上の式の当月製造費用は、原価計算期間(通常1ヶ月間)に消費したすべての原価を集計したものである。もし、月初と月末に仕掛品がなければ、当月製造費用を完成品数量で割れば、完成品単位原価(完成品1単位当たりの原価)を計算することができる。しかし、通常は、月初と月末に仕掛品があるので、上の式から完成品原価を求め、これを完成品数量で割って、完成品単位原価を計算することになる。
ところで、上の式の右辺の項目のうち、月初仕掛品原価はすでに前月末に計算されており、当月製造費用は当月に消費した原価を集計すればよい。したがって、完成品原価を求めるには、月末仕掛品原価を計算すればよいことが分かる。
それでは、月末仕掛品原価の計算はどのように行うのであろうか。総合原価計算では、1ヶ月間に消費したすべての原価を、直接材料費と加工費(直接材料費以外の原価要素)に分類する。そして、月末仕掛品原価は、月末仕掛品が負担する直接材料費と加工費を別々に算定し、これらを合計することにより計算する。直接材料費と加工費に分けて計算する理由は、製品の製造工程において、両者の原価の発生の仕方が異なるからである。
通常、直接材料費は、工程の始点(製造着手時点)で完成品に必要な量がすべて投入される。このような場合、月末仕掛品は、製造工程のどの段階であっても、直接材料費についての加工進捗度(仕上がりの程度)は100%である。なぜなら、月末仕掛品については、完成品と同様の直接材料費が、製造着手の段階で、すでに発生しているからである。しかし、加工費については、製造の進行に応じて徐々に発生するので、月末に、加工進捗度(stage of completion)を調べ、つぎの式により月末仕掛品の完成品換算量を求めなければならない。以上のことを踏まえて、9-2では、月末仕掛品原価の計算式を示すことにしよう。
月末仕掛品完成品換算量 = 月末仕掛品数量 X 加工進捗度価
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