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環境計測のための機器分析法 茶山健二
1章 環境計測のための機器分析法
1-10  むすび
 機器分析の発展の現状は、めざましいものがあり、今後も化学の他の分野の進展に応じて機器分析に対し、さらに高度の要求が出ているので、各種の技術の進歩と相まって、従来不可能とされていたような微弱の化学情報をうまくとり出す新方法が開発されて行くでしょう。また、従来ある機器分析法にコンピューターを併用し、さらに便利に情報を得る各種の方法も、いよいよ盛んになってきつつあります。
 なお、化学分析が主体であった時代には、化学工業をはじめとする各種の企業における分析担当者の地位が、製造担当者などより一段低いようにみられがちでしたが、機器分析法が発展すると共に、分析化学は、製造部門の人々が物質の生産をするのと同様に化学的情報を生産し、これによりその企業において重要な役割を演じていることが次第に理解されるようになっていること、最近の発展プロジェクトの特命グループ内には必ず分析担当者が組み込まれ、活躍を期待されており、成長の著しい会社ほど分析担当者の地位は中枢の部署として認められていること、したがってそれに応じて他の部署以上にきびしい研修を要求されていることをつけ加えておきたいとおもいます。
 現代においては、環境計測を主業とする企業が多く現れ、最先端の分析機器を用いて、超微量物質の計測を行っています。しかしながらこれらの機器分析を扱う分析者も単に高価な機械のボタンを押せばよいというわけではなく、これらの分析においても基本的な部分は今も変わらないことが多く、分析化学の基礎的な部分を学習していないと機器を用いる以前にサンプルを汚染してしまったり、誤った分析値を導いてしまったりすることがあります。これは、分析者にとってはあってはならないことであり、基礎からの学習がいかに大切かが理解されることと思われます。
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