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環境計測のための機器分析法 茶山健二
4章 原子吸光分析法 ヒントは太陽にあった
4-9  検量線
 原子吸光分析では、試料中の目的元素の濃度は標準溶液を用いて作成した検量線から決定します。次に示す3種の方法が用いられます。(図4・10)
(1)  絶対検量線法
 試料中の目的元素の濃度に応じて、既知濃度の標準溶液を段階的に数個調整し、これらの吸光度を測定して濃度との関係をプロットして検量線を得る方法です。標準溶液は出来るだけ分析試料の液性に近いようにします。目的元素以外の元素が多量に含まれているときは干渉による妨害を相殺するために標準溶液にもこれを添加します。
(2)  標準添加法
 試料溶液の一定量を数個分取し、これらに標準溶液の異なる量をそれぞれ加えて目的元素の濃度の異なった溶液列を調整し、吸光度を測定します。添加した標準溶液の濃度と吸光度をプロットして検量線を作成し、吸光度の零の点から試料の目的元素の濃度を求めます。この方法は検量線が良好な直線性を示し、零点を通る場合に適用できます。共存物質の影響が除かれるため、複雑なマトリックスの試料の分析に適しています。
(3)  内標準法
 目的元素の濃度の異なる標準溶液列に、目的元素と物理的・化学的性質の類似した元素の溶液を内標準として一定量添加し、これら二元素の吸光度を同時に測定します。目的元素濃度に対し、二元素の吸光度比をプロットして検量線を作成します。試料溶液にも内標準元素の溶液を同一量加え、吸光度比を測定して分析値を得ます。複光路式の装置を用いる必要がありますが、精度・再現性が向上するという長所があります。
図4・10 各種定量法の検量線
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