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環境計測のための機器分析法 茶山健二
6章 キャピラリー電気泳動法
6-1  分離モード
 キャピラリー電気泳動法 (CE) は分離機構の違いにより異なる名称で呼ばれています。一般にキャピラリー内に緩衝溶液を満たし,自由溶液で泳動分離を行う手法をキャピラリーゾーン電気泳動法 (capillary zone electrophoresis, CZE) あるいは高性能キャピラリー電気泳動法 (high-preformance capillary electrophoresis, HPCE) と呼んでいます。これに対して,イオン性界面活性剤や電荷をもったシクロデキストリン,高分子イオン,などをキャリアーとして分離を行う手法は動電クロマトグラフィー (electrokinetic chromatography, EKC) という名称で区別されています。とくに,泳動溶液にイオン性界面活性剤のミセル溶液を用いる手法はミセル動電クロマトグラフィー (MEKC) と呼ばれ,中性分子に限らず, 種々の化合物の分離に活用されています。CEとEKCはいずれも分離の媒体として自由溶液を用います。一方,キャピラリー内に高分子ゲルを充填し,これを媒体として分離を行う手法はキャピラリーゲル電気泳動 (CGE) と呼ばれています。CGEの分離機構は先に述べたスラブゲル電気泳動法と同様,ゲルの網目構造による分子ふるい効果に基づきます。キャピラリーゲル電気泳動法は,迅速性,簡便性,分解能,定量性などの点でスラブゲル電気泳動より優れているといえますが,分取あるいは精製の目的には適していません。
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