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環境計測のための機器分析法 茶山健二
6章 キャピラリー電気泳動法
6-6  検出器
 CEの検出器は,高速液体クロマトグラフィーで用いられているものであればほとんどのものが利用可能です。市販の装置のほとんどは吸光光度検出器を備えたものですが,アルゴンレーザーを光源とするレーザー励起蛍光検出器もすでに製品化されています。この他に蛍光検出器,電気化学検出器,電気伝導検出器などが報告されています。現段階においてもっとも高感度な検出法はレーザー励起蛍光法であり,特殊な検出用セルを利用するものでは数分子の検出も可能です。最近では質量分析装置との結合に関する研究も盛んに行われており,分離同定の有力な手法として期待されていますが,インターフェースの問題や泳動溶液中の共存イオンの妨害などの問題をかかえています。表6・1にこれまでに報告されているCE用検出器での一般的な検出限界を示した。

表6・1 CEにおける検出法と検出限界
(1)  吸光光度検出器
 もっとも汎用的に用いられているCEの検出器は吸光光度検出器です。CEでは吸光光度検出法に限らず,光学的な検出法は,オンカラムで行うのが一般的です。分離に用いられるキャピラリーの材質は溶融シリカであり,紫外・可視の領域では透明です。しかしながらキャピラリーの物理的な強度を高めるために,キャピラリー外壁はポリイミドによりコーティングされていますが,検出部ではこれを除去しなければなりません。このコーティングは炎で焼くことによって容易に除去できますが,コーティングを除去した部分は折れやすいため,取り扱いの注意が必要です。検出部の長さはせいぜい1mm程度なのでコーティングの除去は2〜3mmほどの長さで十分です。
 吸光光度検出器ではキャピラリーの前にキャピラリー内径と同程度のスリットまたはピンホールをおき,迷光の侵入を防いでいます。しかし,光路長がキャピラリー内径(50〜100μm)であることを考慮すると,通常の吸光光度検出器での検出限界は10-5M程度です。  吸光光度検出器の感度を向上させるために,直方体のキャピラリーを用いて光路長を長くします。キャピラリーの外壁に銀をコーティングしたマルチパスセルを作製し,透過距離を長くするなど,特殊なキャピラリーを用いる例もあります。この他に検出部分のみ内径を大きくしたキャピラリーなども市販されています。
(2)  蛍光光度検出器
 蛍光光度検出器には,キセノンランプを光源とするものとレーザーを光源とするものがあります。研究の初期において通常のキセノンランプ励起の蛍光光度計を改造したものが検出器として用いられていたが,現在では研究のほとんどはレーザー励起蛍光検出法で行われています。これはレーザーの優れた指向性,集光性が微小体積で検出を行うキャピラリー電気泳動法に適しており,また単色であることから散乱光をフィルターなどで除去しやすいという利点を有しているためです。キャピラリーの内径は先に述べたように100μm以下ですが,レーザーは容易に数十から数μmまで集光することが可能です。
 オンカラムでのレーザー励起蛍光検出器の基本的な構成を図6・5に示しています。
図6・5 レーザー励起蛍光検出器の基本構成
 レーザー励起蛍光法では,励起光の散乱光を減少させることが感度向上のためのもっとも重要な因子です。通常,散乱光を減少させるためにキャピラリーは光源,検出器のそれぞれに対して15°程度傾けた配置で固定されます。さらにピンホールとフィルターを光電子増倍管の前に置き,散乱光を除去した後に,蛍光のみ光電子増倍管で測定します。この方法により10-9M程度の検出限界は容易に達成することができます。光源として用いられるレーザーはアルゴンイオンレーザー(488nmまたは514nm)が一般的ですが,その他にもヘリウムカドミウムレーザー,ヘリウムネオンレーザー,半導体レーザー,チタンサファイヤレーザーなどが用いられています。レーザー出力は数mW〜数十mW程度で十分です。
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