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環境計測のための機器分析法 茶山健二
7章 クロマトグラフィー 流れで分離する
7-13  そのほかのクロマトグラフィー
超臨界流体クロマトグラフィー (SFC)
 超臨界流体(臨界温度・臨界圧力を超えた状態)を移動相に用いるクロマトグラフィーをSFC(supercritical fluid chromatography)といいます。超臨界流体の粘度は気体に近く、溶質の拡散係数は気体と液体との中間を示すため、高流速の移動相においてもLCより高分離能が得られます。また、超臨界流体の密度は液体に近いため、溶質に対する溶解度が気体より高く、LCに近い汎用性をもつことが期待できます。

 移動相には二酸化炭素がよく使用されていますが、これ以外にも一酸化二窒素、アンモニア、水、低級n-アルカン、フレオンなどが用いられています。LC同様に、移動相の選択によって試料成分の保持挙動を変化させられます。また、SFCではカラム温度と圧力も保持に大きな影響を与えるため、GCやLCに比べて分離条件の最適化は複雑になりますが、逆に選択の幅が広いことになります。SFC用の装置は、移動相を分離カラムで超臨界状態に保たなければならないため、温度調節ができることと耐圧性が要求されます。したがって、HPLCとGCの装置を組み合せたような構成といえます。移動相は高圧ポンプで、予熱およびコンディショニング部を通って超臨界状態となって分離カラムに導かれ、カラム出口の後方にある圧力調節弁により所定の圧力に保たれています。カラムから溶出した成分の検出にはHPLCやGC用の検出器(特に紫外/可視吸収検出器やFIDがよく用いられる)が適用できます。
薄層クロマトグラフィー (TLC)
 ガラス、プラスチックスなどの平板上に固定相を薄層状に展着したプレートの下端から一定の距離に試料溶液を小さいスポットとしてつけます(原点)。密閉した展開槽中の移動相液中にプレートの下端を浸して展開します。移動相のフロントがプレートの他端近くに上昇すれば展開を中止し、溶媒を蒸発させます。試料成分が着色している場合には、スポットの位置は直接検出できるが、無色の場合には、適当な発色剤を噴霧して成分を発色させるか、紫外線ランプで照射するなどして試料成分のスポット位置を検出します。
図7・18 移動率の決定
 試料成分の確認は、溶媒に対する試料成分の移動率Rf=a/b、または標準物質に対する移動率Rx=a/xを、標品のそれらと比較して行います。なお、Rf値は0.1〜0.7の範囲が適当です。
 TLCによる定量法には、スポット面積、スポット濃度、スポット部をけずりとって分析するなどの方法があります。TLCは簡単、迅速に分析が行えますので、カラムクロマトグラフィーのための条件設定の予備試験法としても重要な意味をもっています。
ペーパークロマトグラフィー
 TLCのプレートの代りにろ紙を保持体とする液体クロマトグラフィーで、TLCとほとんど同様の要領で分析することができます。ろ紙は親水性のため、その表面は水で覆われており、分配モード(LLC)のクロマトグラフィーと考えることができます。
 TLCと異なり、保持体がろ紙であるため、TLCでは使用可能な硫酸が発色剤として使用できません。しかし、展開法はTLCで行われている移動相が下から上に上昇する上昇展開法以外に、逆の下降展開や水平方向への展開も可能です。
参考文蔽
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