modern american economy
戦後確立したアメリカ経済の優位性は1970年代にかけて緩やかに低下します。これは戦争直後に異常ともいえるほど高かったものが、しだいに正常化される過程であったともいえます。前章で見たように、経済成長率は次第に減速したものの大きな不況もなく、労働市場も完全雇用に近い状態でした。またインフレ率も比較的安定していました。したがって、人々が当時のことを振り返って「黄金の60年代」と呼んだのも故なしではないのです。
ところが、1970年代に入りますと、経済成長率の低下のみならず、経済全体のパフォーマンスに大きな悪化が見られるようになりました(表3-1 1970年代のアメリカ経済のパフォーマンスを参照)。
表3-1 1970年代のアメリカ経済のパフォーマンス
|
実質GDP成長率 |
失業率 |
労働生産性上昇率 |
CPI上昇率 |
悲惨度指数 |
|
% |
% |
% |
% |
% |
1968 |
4.8 |
3.6 |
3.0 |
4.2 |
7.8 |
1969 |
3.0 |
3.5 |
0.1 |
5.5 |
9.0 |
1970 |
0.2 |
4.9 |
1.5 |
5.7 |
10.6 |
1971 |
3.3 |
5.9 |
4.2 |
4.4 |
10.3 |
1972 |
5.4 |
5.6 |
3.3 |
3.2 |
8.8 |
1973 |
5.8 |
4.9 |
3.1 |
6.2 |
11.1 |
1974 |
-0.6 |
5.6 |
-1.6 |
11.0 |
16.6 |
1975 |
-0.4 |
8.5 |
2.8 |
9.1 |
17.6 |
1976 |
5.6 |
7.7 |
3.7 |
5.8 |
13.5 |
1977 |
4.6 |
7.1 |
1.5 |
6.5 |
13.6 |
1978 |
5.5 |
6.1 |
1.3 |
7.6 |
13.7 |
1979 |
3.2 |
5.8 |
-0.5 |
11.3 |
17.1 |
1980 |
-0.2 |
7.1 |
-0.2 |
13.5 |
20.6 |
1981 |
2.5 |
7.6 |
1.2 |
10.3 |
17.9 |
国の経済パフォーマンスを評価する場合、生産性の動向が極めて重要と筆者は考えています。生産性の伸びの停滞は、生活水準の向上のテンポが鈍るなど、経済全体に非常に大きな悪影響をもたらすからです。
戦後、アメリカの労働生産性は年平均3%程度の高い上昇率を示していました。しかし、1960年代半ばころからパフォーマンスに悪化の兆しが見られるようになりました。70年代に入ると労働生産性の平均上昇率は低下し、1.7%にまで落ち込んでしまいます。