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modern asian economy
9-3. 日本再生にとっての戦略パートナーとしてのアジア
担当:甲南大学 高龍秀<コ・ヨンス>


最近の日本では、国内物価の下落(デフレ)の原因として安価な中国製品の流入が指摘され、中国やアジアに対する脅威論が主張されることがあります。
たしかに、近年、日本のアジアからの製品輸入は増大し、2002年の輸入相手国で、長年トップだった米国を中国が上回り、中国が最大の輸入相手国となりました<図9>。
しかし他方で、日本の輸出市場としても、中国などアジア諸国は重要性を増しています。 日本の輸出シェアにおける、中国(+香港)、中国も含めたアジアの数値を示せば、1992年に、9.6%、34.2%であったのが、2002年に15.7%、43.1%と上昇しています。
中国など成長を加速するアジア諸国向けに日本の機械類、鉄鋼や石油化学などの素材類などが輸出を伸ばしています。

<図9>日本の地域別輸入額
<図9>日本の地域別輸入額
(内閣府の資料 http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2003/0127/400.html)


近年の日本とアジアの産業協力では、90年代までのような日本が技術的に優位な下での垂直的分業から、対等な水平的分業の事例も増えています。
半導体メモリーでは、圧倒的な競争力を持つ韓国勢が産業再編を進めた日本企業と戦略的提携を結んでいます。
液晶でも、競争力をもつ、韓国、台湾企業が日本企業と提携しています。
中国には、大量の理工系の人材が存在し、それが中国IT産業の基盤を形成していますが、この潜在力に注目して中国と提携する日本・アジアNIES企業の動きもあります。

長期不況に苦しみ、少子高齢化・財政赤字という成長潜在力の低下が見られる日本にとって、躍動的で、成長潜在力に富むアジアとより緊密な経済関係を結ぶことが、日本自身の経済再生にとって戦略的に重要な課題ではないでしょうか。
そのためには、近年、交渉が進んだ、FTAなども含めたアジアとの新しい経済関係構築が必要になると思います。


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甲南大学 高龍秀<コ・ヨンス> koyongsu@center.konan-u.ac.jp
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