human and environment
1-2-3. 環境権をめぐる判例と学説の動向 ステップ 2 - 解答例 -
- 環境法・環境政策 - 大久保 規子
それでは,なぜ裁判所は環境権を認めないのでしょうか。裁判官になったつもりで,いくつかの理由を考えてみて下さい。
(解答例)
- 憲法13条も、25条も綱領規定であり,個々の国民に具体的請求権を付与したものではない。
- 環境権の対象となる環境の範囲、地域等が限定できない。例えば,神戸に住む人は,尾瀬の環境破壊を裁判で争うことができるか。神戸は尾瀬から遠く離れてるが,だからこそ,非日常的な憩いの場として,尾瀬を守ることが重要であるともいえる。
- 環境権は万人の権利だから、一部の者が自分だけの権利として排他的に行使することはできないはずである。
- 裁判の既判力がどこまで及ぶのか不明確である。例えば,高速道路予定地の隣に住む「井上さん」が敗訴した場合、隣人の「佐藤さん」は再度裁判を起こせるか。佐藤さんも敗訴した場合,その隣の「田中さん」が再度裁判を起こせるとすると歯止めがなくなる。
- 「環境か開発か」という政治的価値判断を裁判所に委ねるのは適切ではない。政治の場で決着すべき問題である。
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