human and environment
アジア諸国の環境アセスメント
−日本に先駆けた立法− - 環境法・環境政策 - 大久保 規子
一般に,途上国では環境法の整備が立ち後れていると思われがちである。しかし,アジアでは多くの国が,日本に先駆けて環境アセスメント関連法令を整備している。これらの制度の実効性については慎重な分析が必要であるとしても,その中には,日本にとって示唆に富む点が少なくない。 第1 に,住民参加については,韓国,フィリピン,マレーシア等が規定をおいている。例えば,韓国では,30人以上の関係地域住民から要求があった場合等に環境影響評価書案に関する公聴会を開催することとされている。 第2 に,環境アセスメント実施者について,韓国,中国等では,資格・審査制度を導入している。 第3 に,環境影響評価書について,緩和措置(例えば,フィリピン)や代替案(例えば,タイ)の記載を求める国もある。 第4 に,環境影響評価書の審査について,例えば,タイでは,環境政策部局が環境影響評価書を,学識経験者および許認可担当官から成る専門委員会の審査に付することとされている。また,インドネシアは,地方および中央の環境影響調査委員会へのNGOの参加を定めている。 第5 に,環境アセスメントの実効性を担保するため,例えば,韓国では,特定の事業について事後調査が義務づけられ,罰則規定が置かれている。また,中国では,環境保護部局による環境影響報告書の承認を受けていない事業には,建設承認,金融機関の融資等を行わず,また,その審査を経ずに建設を開始した者に対しては,建設の中止および審査手続の補充をさせ,罰金を科することとされている。 なお,さらに詳しいアジア各国の制度については,野村好弘=作本直行編による『発展途上国の環境法ー東アジアー』,『発展途上国の環境法ー東南・南アジアー』および『地球環境とアジア環境法』(何れもアジア経済研究所・1993ー1996)参照。 アジアの環境法についてはこちら → |