黒字倒産 財務諸表論

 黒字倒産とは、企業が会計上利益を出している(=黒字)にもかかわらず、資金の枯渇などによって企業経営が行き詰まり、最終的に倒産してしまうことをいいます。損益計算書では多額の利益が計上されていたとしても、土地などの固定資産や商品などの棚卸資産といった様々な資産に投資されていれば、利益額に見合うだけの現金や現金等価物が手元に残っているとは限りません。その結果として、企業が経常的に活動を行っていくうえで必要かつ十分な資金(=運転資金)が不足し、自己振出手形を決済できなくなり、不渡手形を出すような場合がでてきます。

 したがって企業の事業体としての存続可能性を判断するには、企業の収益性だけでなく、資金の調達や運用状況に関する情報がきわめて重要です。こんにち先進諸国で、資金の流れを明らかにするためのキャッシュ・フロー計算書 キャッシュ・フロー計算書]が財務諸表の重要な構成要素とされ、その作成と公表が法的に義務づけられているのには、こういった背景があるからです。
(伊豫田 隆俊)