経済政策・経済成長 企業の経済学

・経済成長
 経済活動の規模の拡大が経済成長です。一定期間における経済成長の速度である経済成長率はふつう国内総生産の対前年増加率で測定します。経済活動の規模が拡大しなくても物価が上昇していれば数値は伸びを示すため、経済成長の実態を正しく表すことができません。そこで、実質的な経済成長をはかるために物価の変動分を修正した、実質国内総生産によって算出されています。
 経済成長はその国の産業構造にを変化させ、国民生活の向上に大きな影響があります。一方の経済成長率は、増加した生産量は表しても、増大した所得や富がどのように分配されて、貧富の差が拡大したのか縮小したのかなどの内容は示すことはできません。経済成長を国内総生産だけで表すと、一国全体の所得の増加はわかっても、国民一人一人の生活水準の向上については不明です。例えば公害のよる環境破壊があった場合でもそれが考慮されないため、経済成長は国民の福祉水準を正確に表すことができないという問題があります。現在、 国民の福祉水準を数量化して測る試みとしてNNW(国民純福祉、Net National Welfare)が考案されたり、国内総生産から固定資本減耗や環境破壊などの経済的素運室を差し引いて算出するグリーンGDP(=環境調整済み国内総生産)も考案されており、今後の実施が検討されています。

・経済政策
 経済成長を実現し、景気の変動を安定化させるための金融政策や財政政策などが経済政策です。
 政府は、課税や借り入れ及び支出の財政活動を通じて所得の再分配、資源配分の調整、景気の安定と経済成長を図っています。これらを財政政策と言い、次の2つが代表的です。

財政政策
1. 所得再分配の機能。国民の間の経済的な格差を少なくするために、所得税に累進課税制度を取り入れる。累進課税制度は、所得が高くなるにつれて高い税率が適用される租税制度のことで、高所得者層から多く徴収した税金を生活保護・雇用保険など低所得者層への社会保障給付に振り向けることによって、所得を再分配する。
2. 資源配分機能。民間の企業では十分な供給が困難だったり、政府が行う方が好ましいと考えられる国防・警察などのサービス、道路・上下水道などの公共施設(=社会資本)を提供し、国民生活の安定・向上を図る。資金として、財政投融資計画が大きな役割を果たす。
※ 課税について、イギリスのアダム=スミスは、課税の原則として、公平の原則、確実の原則、便宜の 原則、経費節約の四原則をあげている。これは現実の課税を考える場合の大切な目安。

金融政策
 金融政策とは、中央銀行が貨幣供給量を調整し、金利の操作で経済活動の水準を調整することです。金融政策には、中央銀行が市中銀行への貸出金利を操作する公定歩合政策、法律により銀行の貸し出しに対する準備金の率を規制する支払い準備率操作、中央銀行が市場で債券を売り(=売りオペレーション)買い(=買いオペレーション)する公開市場操作などがあります。例えば景気を拡大するために金利を引き下げたい時、貨幣供給量の増大が求められますがこれには、公定歩合を引き下げ、支払準備率の引き下げ、買いオペレーションを行えば良い、というわけです。



(大塚 晴之)