管理会計の仕組み 管理会計

 管理会計とは、企業内部の経営者や管理者が戦略的な意思決定や経営管理活動をする際に役立つ財務データを提供する会計システムのことです。財務会計が主に企業外部の利害関係者への会計報告を目的とするのに対して、管理会計はその報告対象が企業内部の人間であるところから、一般に前者は外部報告会計と呼ばれ、後者は内部報告会計と呼ばれます。

 財務会計はその目的から、法律や規則といったルールにしたがうことを要求される、社会的制度としての性格をもっています。これに対して、管理会計は企業の目的や必要に応じて実施することが重要で、制度的な制約からは自由で、むしろ個々の企業の目的に対する有効性が重視されます。また、その特性から、財務会計においては一定のルールにしたがって算出された、貨幣数値だけが情報として取り扱われるのに対して、管理会計では、貨幣数値にもとづく情報以外にも、物量情報や数量的情報などが必要に応じて利用されます。さらに、財務会計では、利害関係者間での利害調整が重視されますから、原則的に検証可能性が高く、信頼性も高い過去の情報のみが利用されます。しかし管理会計においては、何よりもまず意思決定への有用性が重視されるため、予測情報や見積情報も利用されます。

 管理会計は、19世紀から20世紀にかけて、アメリカで標準原価計算が世界に先駆けて適用されたことから始まり、その後、1920年代には整合的な計算手続が体系化されました。近年、統計的手法の高度化や情報処理技術の発展、それに経済学など関連する諸科学の発展を受けて、その適用範囲は飛躍的に広がっています。

(伊豫田 隆俊)