証券論

株を持つ動機は、その企業の期待収益の割り引き現在価値、すなわち配当の合計額がプラスの値を取るからで、基本的には収益状況に応じて株価が決まります。これがファンダメンタルズによる株価形成です。実際の証券市場では、株価がこの値を離れて上昇することがあります。この原因には、大きく二つあります。

一つは、市場参加者が期待収益を計算する際に十分な情報がなく、誤認の結果、企業を高く評価しすぎている場合です。この場合、時間とともに誤認が解消され、株価はファンダメンタルズの価値に収束しますが、市場参加者の全部が誤認してしまうと、一時的にファンダメンタルズを離れた相場が支配的になることがあります。このような状況が、バブルです。

もう一つはより深刻な状況で、市場参加者がすでにファンダメンタルズを離れて株価形成されていることを知りながら、株価上昇基調がすぐには解消されないと考えて、値上がり益を追及して株を買う場合です。人々の行動心理のみが株価の根拠であり、このようなバブルは崩壊のタイミングはわかりません。

（大塚　晴之）