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quantum mechanics
1-2. 黒体放射
- プランクの模型と黒体(空洞)放射 -
量子力学 - 太田 雅久

 壁の物質に吸収される光と、温度Tの壁から放射される光が平衡状態にある物理的な状態は「温度Tに熱せられた閉ざされた空洞」を考えるのがよいでしょう。
 空洞の表面が凸凹していると仮定すると、空洞の壁にやってくる光は全て吸収され(黒体と同じ)、壁から放出される光と平衡状態(単位時間に吸収される量と放出される量が等しい状態)になっていると考えることができます。(ここから黒体放射の名前がつけられている。)
 壁の温度が高いと壁から色々な振動数の光がたくさん放出されます。また、空洞にたくさんの光が充満すると、たくさんの光が壁にあたって吸収されます。従って、壁の温度によって空洞内の特定の振動数を持つ光の数、つまり光のスペクトルは変わります。

黒体放射

 この空洞に小さな穴をあけて、そこからもれ出てくる光のスペクトル(振動数の分布)を分光器で測定します。教科書にあるような、温度に関係した特定の波長のところに最大値を持った分布を示します。この分布を説明するために、プランクは次のような物理模型を用いました。

「空洞の壁が『共鳴子』の集合体であり、各共鳴子は、その末端が電荷を帯びている質量ゼロのスプリングである。このスプリングは、いかなるバネ定数をも持ちうる。つまり、いかなる振動数ででも振動できる。壁を熱することでスプリングが振動を始め、各荷電粒子は加速され、マックスウエルの電気力学に従い空洞中に光のエネルギーを放射する。スプリングに共鳴する光は再び共鳴子に吸収される。そして、放射と吸収が釣り合って平衡状態が生じる。」(「マックス・プランクの生涯」 シヨン・L・ハイルブロン著、村岡晋−訳、叢書・ウニベルシタス691、法政大学出版局)

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