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quantum mechanics
1-2. 黒体放射
量子力学 - 太田 雅久

 それでは、その現象とはいったいどのようなものであったのか。
 先ず、物体から発せられている光について考えましょう。
 物体はある温度に熱せられると、そこから光(電磁波)の放射が観測されます。
 例えば300Kよりも少し高い私たちの体からは目に見えませんが遠赤外線が放出されています。6000Kに近い太陽の表面からはオレンジ色を中心とした可視光線が、100000Kを超える夜空の星からは、青白い光が観測されます。温度が高い物体ほど、波長の短い光を放出します。

 さて、一つの物理模型の話に移ります。
 内壁の温度がTに保たれている空洞に光が満たされているとしましょう。
 その光のスペクトルを考えること、またそのスペクトルを説明すること、これが量子力学が誕生するきっかけとなった問題です。

黒体放射

 プランクは空洞の内壁が、いかなる振動にも共鳴する振動子の集合体と考え、空洞内に充満する電磁波の振動と内壁の振動子との平衡状態を考えました。
 「振動子がエネルギーhνの電磁波を吸収するし、エネルギーhνで振動している振動子は電磁波(エネルギーhν)を放出することができる。」と考えるといいでしょう。
 さらに、電磁波あるい振動子のエネルギーが微小なエネルギーεの整数倍しかとりえないと考えることによって、空洞の穴から出てくる平衡状態にある電磁波で光の観測スペクトルを説明しました。

 プランクの模型を用いて、空洞のエネルギー密度を計算します。何がわかれば空洞のエネルギー密度を計算できるのかというと、それは次の二つの量です。

(1)温度Tが定まっているとき、振動数νの振動子のもつ平均エネルギー。
(2)空洞内で振動数がνv+dvの間にある振動子の数v+Z(v)

先ず(1)の問題からはじめましょう。
私達は古典力学においてエネルギー等分配則を知っています。これは一つの自由度に与えられる平均エネルギーが温度の関数でkt/2であるということです。ここで、kボルツマン定数です。
一次元振動子の場合、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの二つの自由度のため、kT のエネルギーが与えられます。従って(1)の問題は解決したかに見えます。しかし、量子力学的にはエネルギーが連続的でないため平均値が kT と異なってくるところが重要な点です。

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